企業が「オンプレミス回帰」に踏み切る“まさかの現実” そもそもの原因は?:選ぶべきはオンプレミスかクラウドか?【前編】
アプリケーションを動かすインフラとしてパブリッククラウドを選ぶ動きが広がっているが、パブリッククラウドを利用している企業の約7割がオンプレミスに戻ることを検討している。なぜなのか。
企業がアプリケーションを動かすインフラとして、オンプレミスのデータセンターかパブリッククラウド、または双方を組み合わせたハイブリッドクラウドを選べる。市場を見ると、パブリッククラウドの採用は加速している。
一方で、調査会社IDCが2022年に発表した調査結果によると、パブリッククラウドを利用している回答企業の71%が、パブリッククラウドに配置しているアプリケーションの一部または全てを、2023年末までにオンプレミスに移行することを計画している。その理由を分析しながら、オンプレミスとパブリッククラウドの特徴を比較する。
なぜ企業は「オンプレミス回帰」に踏み切る? そもそもの原因とは
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企業がパブリッククラウドからオンプレミスに戻る主な理由は次の通りだ。
- コスト削減
- セキュリティとコンプライアンス(法令順守)
- ネットワーク遅延
- データ量の増大
- クラウドベンダーとのトラブル
- クラウドサービスに関する知見の不足
- 移行計画の不備
アプリケーションをパブリッククラウドに置くか、オンプレミスのデータセンターに置くかを決める際は、システム構築用のリソースをいかに調達するか、インフラをいかに管理するかの2点を考える必要がある。
パブリッククラウドではサーバやネットワークなどのリソースをクラウドベンダーが用意し、ユーザー企業は限られたサービスしか利用できないが、インフラの保守やメンテナンスをユーザー企業がする必要はない。オンプレミスではユーザー企業が各種リソースを自由に用意できるが、保守やメンテナンスを自社で管理する必要がある。
オンプレミスとパブリッククラウドのメリットとデメリットを以下に整理した。
- 初期費用
- オンプレミスのデータセンターは、サーバやソフトウェアなど、アプリケーションを動かすための資産に先行投資する必要がある。電力供給や冷却の設備、物理的なスペースも必要になる。
- パブリッククラウドはサーバを含む設備をベンダーが所有して管理するため、ユーザー企業は初期費用を抑えられる。
- リソースのカスタマイズ性
- オンプレミスの各種アプリケーションやそれらを動かすためのリソースは、ユーザー企業が自身で導入し、保守するため、全責任を負うが自由にカスタマイズできる。
- パブリッククラウドの場合はインフラが常にクラウドベンダーの管理下にあるため、カスタマイズ性はベンダーに依存する傾向にある。
- セキュリティ
- オンプレミスは外部とのネットワークを遮断できるため、銀行口座情報や事業秘密のような機密データは基本的にはオンプレミスに保管することが望ましい。
- パブリッククラウド事業者は、セキュリティ対策技術のアップグレードを定期的に実施するため、堅牢(けんろう)なセキュリティ体制を築ける可能性はある。
- コンプライアンス
- 政府や業界の規制に準拠するためには、自社でコントロール可能なオンプレミスのデータセンターでないと、データやインフラを適切に保管・管理し切れないことがある。
- パブリッククラウドはサードパーティーのベンダーが関与している以上、コンプライアンス要件を満たせないことがある。
- スケーラビリティ(拡張性)
- オンプレミスでの拡張は、新しいサーバや関連インフラの新規導入を意味する。これには費用が掛かる。物理的なスペースの制限がある場合もある。
- パブリッククラウドは、ベンダーが管理ツールを提供して自動的なスケールアップまたはスケールダウンを実現するため、トラフィックの急激な増加に対処しやすい。
- 可用性(システムの継続性)
- データセンターの可用性には、ネットワークや消費電力などさまざまな要因が絡み合っているため、オンプレミスの方が優れているとは一概には言えない。
- パブリッククラウドはインフラ部分をクラウドベンダーが管理するため、ユーザーが特別な対策をしなくとも、一定の可用性が確保されている傾向にある。
後編はオンプレミスとパブリッククラウドの長所と短所を分析する。
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