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ハッキングという「創造的な仕事」にAIはどう影響するのか?「倫理的ハッキングとAI」の実態【前編】

人工知能(AI)技術の普及はハッカーの活動にも影響を与える可能性がある。攻撃による被害の抑止を目的に活動する「ホワイトハッカー」は、AI技術をどう捉えているのか。調査データを基に探る。

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 人工知能(AI)技術は、ペネトレーションテストの実施や、脆弱(ぜいじゃく)性報奨金プログラムへの取り組みなど、ホワイトハッカー(倫理的なハッカー)の活動に影響する可能性がある。実際、ホワイトハッカーのコミュニティーではAI技術の活用が加速している。

 脆弱性報奨金プログラムを手掛けるBugcrowdはホワイトハッカーの活動を調査し、年次報告書「Inside the Mind of a Hacker」(ハッカーの心の内側)にまとめている。同報告書の2023年版はAI技術に焦点を当て、ホワイトハッカーがAI技術にどのような期待を抱いているのか、AI技術をなぜ使うのか、どのように使うのかなどを掘り下げた。

創造的な仕事「ハッキング」はAIでどう変わる?

 Bugcrowd は1000人のホワイトハッカーから回答を得た。同社によると、AI技術がホワイトハッカーにとってどのような存在なのかを問う設問で、21%が「AI技術はすでにハッカーの能力を超えている」と回答した。約3割は「5年後にはAI技術がハッカーの能力を超える」と答えた。

 調査で際立ったのは、AI技術がホワイトハッカーの仕事を変える可能性だ。調査対象者の78%は「AI技術は5年後(2028年)までにホワイトハッカーの仕事を大きく変える」と回答した。「AI技術は現時点ですでにホワイトハッカーの仕事を変えている」と回答したのは40%だった。

 AI技術は、反復的で単調な作業を得意としている。人間の仕事を奪うのではないかと懸念する人がいる一方で、ホワイトハッカーのコミュニティーでは「ハッキングには人間の創造性が欠かせない」という考えが浸透しており、AI技術を敵視する人は多数派ではない。Bugcrowdの調査では、72%が「AI技術で自分の仕事がなくなるとは考えていない」と回答した。

 例えば、ハンドルネーム「Nerdwell」のホワイトハッカーは「AI技術が人間に取って代わることがあるとしても、それは相当先の話だ」と語る。同氏は約20年間にわたり、ホワイトハッキングの仕事に携わっている。「AI技術は、攻撃パターンの認識と既知の脅威への対処を得意としている。未知の脅威に対処できるのは、やはり人間だ」(同氏)

 「OrwaGodfather」という別のホワイトハッカーはAI技術について、自分の仕事を奪うのではなく、その在り方に影響を与える可能性があると指摘する。同氏が特に期待するのは、AI技術によって作業が自動化し、仕事がより効率的になることだ。「ペネトレーションテストを実施して脆弱性を発見した場合、私はレポートを書くことに30分を使いたくない。記述の作業はAI技術に任せることができる」。同氏はそう述べる。


 中編は、ホワイトハッカーがAI技術を具体的にどのように活用しているのかを掘り下げる。

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