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4G併用ではなく「5Gだけ」のすごさとは? 現場で役立つ“なるほどの機能”5Gの「データ伝送性能」が肝

シンガポール市民防衛庁は、IBMなどのパートナー組織の支援を受けて、「5G」や「AR」といった先端技術を活用した“スマート消防車”の実現に乗り出す。その具体的な取り組みや、5Gの活用方法とは。

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 シンガポール市民防衛庁(SCDF:Singapore Civil Defence Force)は、「5G」(第5世代移動通信システム)や「コンピュータビジョン」(画像情報を通じて対象の内容を認識し理解するAI技術)といった先端技術を、消防署で活用するプロジェクトを開始する。

 ネットワークインフラは、「4G」(第4世代移動通信システム)の設備を使用せずに5Gの設備だけで構成する「5G SA」(SA:スタンドアロン)になる。通信事業者やIBMがこのプロジェクトを支援する。具体的な取り組みや、5G SAの活用方法はどのようなものなのか。

4Gではなく「5Gだけ」だと何ができる? そのスマートな活用方法

 今回のプロジェクトは、シンガポール北東部プンゴル地区にあるSCDFの消防署で実施される。テストベッド(試験用環境)となるのは、5Gに接続可能なスマート消防車だ。SCDFは以下4つの組織と共同でプロジェクトを実施する。

  • シンガポールの情報通信メディア開発庁(IMDA:Infocomm Media Development Authority)
  • ホームチーム科学技術庁(HTX:Home Team Science and Technology Agency)(注1)
  • 通信事業者StarHub
  • IBM

※注:「ホームチーム」は、シンガポールの内務省(ホームオフィス)の管轄である警察、刑務所、入国管理、麻薬取り締まり、情報部などのテロ対策、危機管理、緊急事態対応の関係機関を指す。

 5G SAのネットワークインフラを用いることで、5Gのデータ伝送性能を最大限活用できるようにする。例えば、消防士が装着するスマートグラス(通信機能を搭載した眼鏡型のウェアラブルデバイス)は5Gネットワークに接続し、以下の機能を提供する。

  • 装備の点検や在庫確認時にスマートグラスの画面に作業手順や動的コンテンツを表示する
  • 音声コマンドで動作する
  • 管理用のダッシュボードに点検データを送信し、装備の状態をほぼリアルタイムで更新する
  • 装備に不備がある場合はダッシュボード表示によって通知する

 SCDFは、AR(拡張現実)を用いて火災現場の映像を一定以上の解像度でほぼリアルタイムに転送することで、遠隔地の調査担当者に判断を仰ぐ取り組みも計画している。これらの取り組みにより、緊急時における対処能力の向上や、現場対処と状況分析の迅速化と容易化が見込める。

 プロジェクトではHTXがホームチームの技術部門として、技術的支援とガイダンスを担当する。StarHubは5Gネットワークを、IBMは装備点検の自動化技術と、装備の準備を支援するコンピュータビジョンソフトウェア「IBM Maximo Visual Inspection」を提供する。

 IBMのサプライチェーン担当バイスプレジデントを務めるロナルド・カストロ氏は、「単一のダッシュボードにリアルタイムでデータを集約し、そのデータに基づいて業務と意思決定を実施する体制は、業務の安全な遂行に重要だ」と話す。

 SCDFの未来技術・公共安全担当副理事を務めるリン・ヤング・アーン氏は、「当組織とIMDA、HTX、StarHub、IBMの密接な協業により、データ通信の限界を押し広げ、業務態勢を強化できた」と話す。今後もさらに協力を進めて新興技術と5Gの利用を加速する方針だ。

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