クラウド料金が「高過ぎる現実」を前に払うしかない企業の本音:FinOps成功の鍵【第1回】
クラウドサービスのコストが上昇しており、それが負担になっている企業は珍しくない。企業はクラウドサービスについてどう感じているのか。どのように負担を抑えればいいのか。
調査会社IDCのバイスプレジデントであるスティーブン・ミントン氏は、「インフレ圧力にもかかわらず、クラウドサービスに対する強い需要がIT関連の支出の伸びをけん引し続けている」と述べる。クラウドサービスは現代のITインフラ市場を支える屋台骨だ。
ところがクラウドサービスにはコストが変動するという注意点があり、そのコストは上昇している。結果として、IT部門のリーダーと財務部門のリーダーの間で、激しい会話が交わされることもある。企業はどのように考えているのか。
「クラウドコスト上昇」に対する企業の本音とは
ITインフラベンダーNutanixは2022年から2023年にかけて、世界各国の企業におけるIT部門の意思決定者を対象にして年次調査を実施した。その調査報告書「Enterprise Cloud Index」によると、調査対象となった企業の85%が、自社にとってのIT管理上の最重要課題として「クラウドサービスのコスト管理」を挙げた。
ソフトウェアベンダーFlexera Softwareの調査「2023 State of The Cloud Report」では、「クラウド利用における、貴社の最大の課題は何か」という設問の回答として、「セキュリティに関する懸念」(79%)よりも「クラウドコストの管理」(82%)が上位になっている。
データセンター事業者のAptum Technologiesが実施した調査「2023 Cloud Impact study」によれば、クラウドサービスに対して必要以上に支出している企業が目立つという。背景には、オンプレミスとクラウドサービスを併用するハイブリッドクラウドや、複数のクラウドサービスを使い分けるマルチクラウドの導入で、コスト管理が複雑になっていることがある。
FinOpsとは何か
IDCによれば、ここ数年でクラウドサービスの導入が加速する一方で、「クラウドサービス利用時のガバナンスと管理の仕組み作り」が遅れている。その結果、不必要な支出が生じている。企業にとっては、クラウドサービスの利用価値を向上させる必要がある。「そこで役に立つのが、クラウドサービスの特徴を生かしたコスト管理の手法『FinOps』だ」とIDCは述べる。
FinOpsは「Finance」(財務)と「DevOps」(開発と運用の融合)を掛け合わせた用語だ。FinOpsのベストプラクティス構築や教育、標準化に取り組んでいる非営利団体FinOps Foundationによると、FinOpsとは「進化するクラウド財務管理の規律と文化的実践」であり、クラウドコストに透明性と説明責任をもたらすことを目標としている。
次回は、FinOps実践のノウハウを紹介する。
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