「ERP」より「APS」が使えるのはどんなとき? 4つの例で解説:生産管理を支援するERPとAPS【後編】
ERPでも生産工程を管理することは可能だが、APSが必要になる場合がある。APSが役立つのはどのような場面なのか。4つの例を紹介する。
「ERP」(統合基幹業務システム)は、人事や生産、経理などさまざまな業務を管理するためのシステムだ。製造業は在庫や納期を管理したり、製品の生産効率や品質を改善したりすることにERPを利用できる。他方、「APS」(生産スケジューラー)は生産計画の作成と生産プロセスの可視化をするためのシステムだ。ERPとAPSは似た機能を搭載しているが、同じではない。APSが役立つ4つの例を紹介する。
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サプライチェーンに遅延が生じた場合、生産部門は設備を最も生産効率が良い状態で使用できるように、生産スピードを再調整する必要がある。このような場合に、生産工程に関わるさまざまなデータを再入力せずに計画を調整できるのがAPSの利点だ。
APSはレポート生成やダッシュボード機能を搭載している。ある生産ラインが遅延したことで別の生産ラインに遅れが生じる場合、スケジュールにどのような変更が必要になるかをレポートで把握できる。レポートの内容から、スケジュールの不備や従業員の人員不足といった潜在的な課題を発見することも可能だ。
2.人員不足
生産現場が人手不足に陥った場合、現場のリーダーは特定の生産ラインを減速させた場合の影響を踏まえて、どの生産ラインに注力するかを決定する必要がある。APSはそのような意思決定にも役立つ。
生産ラインの遅れを取り戻すために従業員が残業する場合や、短期的に生産量を減らした場合に、どのような影響が生じるのかを特定することにもAPSが役立つ。その内容を基に、適切な労務費(人件費のうち生産業務にかかった費用)を算出することも可能だ。
3.仮説の検証
APSを使って仮説を検証することも可能だ。例えば顧客から納期の前倒しを要求された場合に他の顧客や納期に与える影響や、生産する製品の数に対する最適な機械の個数や従業員数を算出できる。
データを何度も入力し直す必要はなく、何パターンもの仮説検証が可能だ。
4.キャパシティープランニング
一定の時間内に生産できる製品の量を計算する際に、製品数を過大に見積もってしまうと、製造が納期に間に合わずクレームにつながる可能性がある。過小に見積もれば、設備や人員の待機時間が増えてしまい、十分に活用できなくなる。APSを使えば、設備や材料、人員といったリソースと生産量を照らし合わせてリソースを適切に配分できる。
APSを使えば、将来的な製造計画の策定も可能だ。生産設備の拡張を検討する時に、過去のデータを基に追加で必要となるスペースや設備、材料の量を見積もることができる。
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