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画像処理から気象予報まで――「離散事象シミュレーション」とは何かおさらいデータサイエンスのモデル入門【第3回】

画像処理や気象予報など、身近な場面で活用されている予測モデル「離散事象シミュレーション」の仕組みや活用例について解説する。

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 社会における複雑な事象を予測するために、予測モデルを用いたシミュレーションが欠かせない。本稿は、人や物の流れなど、ランダムに発生する事象の分析に用いられる「離散事象シミュレーション」について解説する。

「離散事象シミュレーション」は身近なところに

 1980年代に理論物理学者スティーブン・ウルフラムが提唱した計算モデル「セルオートマトンモデル」は、空間に格子状に敷き詰められた多数のセルを自動機械(自動機械)として扱う。セルは近隣のセルと相互作用する中で自らの状態を変化させる仕組みだ。

 セルオートマトンモデルの中で特に有名なのが、英国の数学者ジョン・ホートン・コンウェイが1970年代に開発した「Conway's Game of Life」だ。セルは生命体であり、単純なルールに従って誕生や消滅を繰り返す。初期のセル分布によって、複雑なパターンが生み出されることから流行した。

 このように、時間を連続的なものと見なさず独立した事象に分割し、事象と状態の因果性から近似的な計算結果を算出する手法を「離散事象シミュレーション」という。離散事象シミュレーションは、格子の精度がシミュレーション精度に依存する場合によく活用される。例えば、画像処理のフィルタリングや、機械学習(ML)の畳み込み演算に使用されるカーネル技術は、離散事象シミュレーションが支えている。

 他にも、気象予測では気象情報をボクセル(立方体のセル)にひも付け、前の事象や状態に基づいてセルへの入力と出力を決定する。理論的には、マップを表現するメッシュ(格子の集合体)が細かいほど正確性が増す。三角形や六角形のメッシュは、長方形のメッシュよりも正確性に優れる傾向にある。データアナリストは、メッシュの形状やトポロジー(構成)、位相を考慮し、モデルを修正する。

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