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メタバースは「死んだ」のではなく「死んだふり」をしていただけ?気になるメタバースの今後【前編】

メタバースを取り巻く熱狂は落ち着き、もはやメタバースは廃れつつあるかのように見える。しかし業界関係者によると、この見方は正しくない。メタバースの現状と今後を考察する。

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 「メタバース」に対する人々の熱狂は、いまやすっかり鳴りを潜めたような印象を受ける。一方で、業界関係者は「メタバースは終わっていないどころか今が熱い」との意見を示している。メタバース市場ではひそかに何が進行しつつあるのか。これまでの動向と併せて、メタバース市場で今後何が起きるのかを解説する。

メタバースは「死んだ」のではなく「死んだふり」をしている?

 2021年から2022年にかけて、メタバースかいわいは大きな熱狂に包まれた。Facebookは“Meta Platforms”にリブランディングし、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)を体験できる専用のヘッドセットは高性能化が進んだ。このような要素が一体となり、人々のメタバースに対する関心をかき立てた。企業も、「デジタルツイン」(現実の物体や物理現象をデータ化し、仮想空間で再現したもの)といったメタバースの応用に期待を寄せた。

 しかし一定期間がたち、メタバースの流行は落ち着いたかのように見える。背景には、以下のような要因がある。

  • Meta Platformsに新しい動きが見えない
  • 「NFT」(非代替性トークン)市場が暴落した
    • NFTは「代替できないデジタルデータ」であり、デジタル世界では偽造不可な鑑定書や所有証明書として使われている
  • AppleはARデバイス「Apple Vision Pro」を2023年6月に発表する際、メタバースではなく「空間コンピューティング」という言葉を使った

 AI(人工知能)ベンダーUnanimous AIの最高経営責任者(CEO)兼チーフサイエンティストであるルイス・ローゼンバーグ氏は反対の意見を示す。メタバースは成長スピードこそ遅いが、リブランディングを通してより強固な存在へと進化しているさなかだ、というのが同氏の主張だ。

 ローゼンバーグ氏は1991年から、没入型コンピューティングの研究に取り組んできた。「あれから30年以上たっているが、没入型コンピューティングが大規模に普及するには、少なくともあと5年はかかるだろう」と語る。一方で、メタバースの普及は間近だと確信しているという。「MR(複合現実)コンテンツはあまりにもリアルで、人間の知覚にうまく溶け込み、現実の一部として認識される。デジタルとフィジカルそれぞれの生活を別物として語らなくなる未来が、近いうちに到来する」と同氏は予測している。

 「メタバースは終わったという報道は、時期尚早なだけでなく全くの見当違いだ」。こう話すのは、コンサルティング企業PricewaterhouseCoopers(PwC)でグローバルメタバース部門と顧客戦略および顧客体験部門を率いるロベルト・ヘルナンデス氏だ。ヘルナンデス氏は、メタバースを取り巻く現状を、2000年頃のインターネット黎明(れいめい)期と重ねる。当時、インターネットは「一時的な流行」だといわれていたが、いまや生活になくてはならない存在だ。「メタバースをはじめとする全ての没入型技術が、新たな成長の局面に入りつつある」(同氏)


 次回は、普及に向けた過程においてメタバースが今どのような段階に来ているのかを解説する。

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