伝統のサッカー協会が実践、ファンを幸せにする「プロダクト志向」の開発とは?:The FAのCIOに聞くデータ活用と意思決定【後編】
イングランドサッカー協会(The FA)は、CIOクレイグ・ドナルド氏の指揮の下でアジャイル型のサービス開発を推進している。どのような取り組みが進んでいるのか。
イングランドサッカー協会(The FA)のクレイグ・ドナルド氏は、2018年にThe FAのCIO(最高情報責任者)に就任した。ドナルド氏が率いるIT部門は、さまざまなプロジェクトやサービスの開発に取り組んでいる。同氏の指揮の下で、The FAの開発は上流工程から下流工程へと順番に開発を進める「ウオーターフォール」型開発から、小規模な変更を短期間のうちに繰り返す「アジャイル」型開発に移行した。どのような取り組みが進んでいるのか。
The FAが推進するアジャイル型開発とプロダクト志向
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The FAは短い開発サイクルを繰り返すことで開発スピードを早め、新機能を追加しやすくしている。2024年以降の2年間で、The FAはユーザーエクスペリエンス(UX:ユーザーの体験価値)の向上や事業目標の達成といったさまざまな課題を管理しながら開発に取り組む。それと同時に、ユーザーに価値ある製品を提供する「プロダクト思考」を実践することを目指す。「2024年からの1年半の間に大規模なシステムの開発プロジェクトを終える。その後、IT部門は組織全体と協力してこれらのシステムの改善に取り組む」(ドナルド氏)
イングランド代表チームの本拠地でThe FAの本部があるウェンブリースタジアム(Wembley Stadium)のITインフラの管理や、世界各地の試合に参加するイングランド代表チームの支援も、ドナルド氏が率いる取り組みの一つだ。「遠征先での動画コンテンツの配信をはじめとした業務が増えており、支援を求めているThe FAの従業員がたくさんいる」とドナルド氏は話す。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を教訓に、選手やコーチ、役員のスキル向上を支援する教育プログラムも模索している。対面でのやりとりではなく、個人の背景やニーズに即した教材をオンラインで提供しようとしている。The FAは「学習体験プラットフォーム」(LXP:Learning Experience Platform)を構築するためのベンダーの入札を進め、成果重視の教育を実現する意向だ。
「Find Footbal」というWebコンテンツの提供も、ドナルド氏が進める施策の一つだ。年齢や居住地域、性別やサッカーのスキルといった条件を入力すると、その条件に合ったチームを検索できるのが特徴だ。The FAは2016年から性別にかかわらず誰もがサッカーをプレーできる環境作りに取り組み、女子選手と観戦者数を2倍に増加させた。「性別を理由にサッカーをプレーすることを躊躇(ちゅうちょ)してきた女子もいる。その希望をかなえるためにも、ユーザーがアクセスしやすい方法で情報を提供している」とドナルド氏は説明する。
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