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Microsoft 365の「Teams分離」に待ち受けるまさかの結末揺れるMicrosoft製品【後編】

Microsoftは「Microsoft 365」「Office 365」から「Teams」を切り離して提供する地域を拡大することを決定した。その根本には、同社のユーザー企業が示した“ある考え”があった。

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 Microsoftは2024年4月、ユニファイドコミュニケーション(UC)ツール「Microsoft Teams」(以下、Teams)を、オフィススイートのサブスクリプションサービス「Microsoft 365」「Office 365」から除外して提供する地域を拡大すると発表した。

 それまで同社は、Teamsの切り離しを欧州経済領域(EEA:欧州連合の加盟国とアイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタイン)とスイスのユーザー企業に限定して実施していた。サービスの切り離しは、2023年7月に欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会が、Microsoftを市場独占の疑いで調査したことを受けたものだ。調査の背景には、「Slack」「Zoom」といった競合のコラボレーションツールを提供するベンダーからの声がある。Microsoftによる“Teams分離”の結末には、何が待ち受けているのか。

「Teams分離」に待ち受ける“まさかの結末”

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)から今回のMicrosoftのライセンス変更までに、数年の月日が流れている。「企業はパンデミックを迎えるのとともにテレワークを実施するようになり、Web会議ツールとコラボレーションツールの導入に一気に動いた」と、調査会社Deep Analysisの創設者アラン・ペルツシャープ氏は語る。

 Microsoftは2016年にTeamsをプレビュー版として提供開始し、パンデミック時にはすでにOffice 365のライセンスにバンドルされていた。企業からすると、SlackやZoomに料金を払うことなく、契約中のOffice 365に含まれているTeamsをコラボレーションツールとして使えることは、経済的なメリットが大きかった。

 それから数年がたった2024年、Teamsを利用中の大企業が他のコラボレーションツールに切り替える可能性は「高くない」とペルツシャープ氏は考える。「コラボレーションツールの変更は容易ではなく、たいていの場合は企業が持つサービスに関する知識とそれまでの経験の大部分が失われてしまう」と同氏は言い添える。

 とはいえ今回のライセンス体系変更は、Slackを提供するSlack Technologiesや、Zoomを提供するZoom Video Communicationsからすると、条件をいくらか公平にし、競争の場をもたらすものだ。「ただしコラボレーションツールの新規大量採用が見込めた『つかの間の数年間』は、すでに終わってしまった」とペルツシャープ氏は語る。

規制当局とMicrosoftはどう動くのか

 MicrosoftによるTeamsの切り離しについて、調査会社Forrester ResearchのアナリストであるJ.P.ガウンダー氏は、EUの規則だけではなく、他の地域における規制強化の可能性を考えると「賢明な対処だ」との意見を示す。

 現にEUはこのところ、Apple、Meta Platforms、Googleの親会社Alphabetなどに対し、デジタル市場法(DMA:Digital Markets Act)違反の調査を始めている。デジタル市場法は、ベンダーに対してサードパーティー製品/サービスとの相互運用性の確保と、自社製品の優遇の禁止を求めている。

 ガウンダー氏によると、MicrosoftによるTeamsのライセンス体系変更の次の争点は、価格設定になる見込みだ。同社は「TeamsをMicrosoft 365およびOffice 365から切り離して提供することはMicrosoftの経費を上げることになるため、Microsoft製品/サービスが値上がりするのは当然だ」と主張する可能性がある。

 「この主張は、少なくともある程度は事実だ」とガウンダー氏は述べる。その理由について同氏は以下のように説明する。「切り離した製品/サービスを管理、開発、販売することは、かえってコストがかかる。バンドルしていない製品/サービスを知ってもらうためのマーケティング予算を増やす必要もある」

 「規制当局は値上げに対していい顔をしないと思われるが、Microsoftの主張に異議を唱えるのは簡単ではない」(ガウンダー氏)

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