UCに「PoE」を使うメリットとデメリット【前編】
LANケーブルによる「PoE給電」はなぜ“お得で安全”なのか?
企業のITインフラで意外と悩ましいのが電源の問題だ。ルーターやスイッチなどさまざまなハードウェアを電源の近くに設置する必要がある。PoEはこうした問題を解決できる可能性がある。
電力供給規格「PoE」(Power over Ethernet)はLANの配線に用いるイーサネットケーブル(LANケーブル)を使用して電力を供給する技術であり、コンセントやアダプターがなくともPoE準拠のデバイスに継続的に給電が可能だ。音声やビデオ、文字など複数のコミュニケーション手段を統合して提供するユニファイドコミュニケーション(UC)を支えるインフラに、PoEを導入することで複数のメリットが見込める。なぜなのか。
「PoE給電」はなぜ“お得で安全”?
併せて読みたいお薦め記事
まだ残る有線ネットワークを生かす
PoEのデバイスには給電機器(PSE)と受電機器(PD)の2種類がある。以下に示すのは、UCツールを使う場合のPSEとPDの例だ。
- PSE
- スイッチ、スプリッタ(信号を分離する装置)、ルーター
- PD
- VoIP電話、IPカメラ、テレビ電話
UCのインフラにPoEを利用するメリットは以下の通りだ。
ネットワークインフラの最適化
スプリッタやPoEインジェクター(PoE非準拠の装置にPoE機能を追加する装置)を利用すれば、PoEに準拠していないデバイスもPoEネットワークに接続できる。この特性は、企業のLAN設計を改善してシステム負荷を低減するのに役立つ。
PoEを導入した場合、電力とデータを単一のケーブルで転送できるため、追加の電気配線や充電ポイントを社内に設置する必要がなくなる。
集中管理
PSEは、デバイスに供給可能な電力を自動検出し、過剰な電力損失を回避する機能を備える。ダウンタイム(故障時間)を抑えるために、PoEに準拠したスイッチ(以下、PoEスイッチ)には通常のデータ転送に用いるダウンリンクポートに加えて、さまざまな他ポートと通信できるアップリンクポートが用意されている。
PoEスイッチには、ネットワークに接続しているデバイスを管理する機能が搭載されているものがある。その機能によって、リモートからネットワークの死活監視やスケジューリングなどが可能となる。こうした機能を利用することで、ネットワークとネットワーク内のデバイスを一元的に管理可能だ。PoEに準拠したアンマネージドスイッチ(複雑な管理機能がないスイッチ)もある。
選択肢の広さ
UCツールにPoEを導入すると、ネットワーク設計の自由度が増す。PoEネットワークに接続するデバイスは、ソケット、充電ポイント、電源の有無の影響を受けないためだ。停電時もPoEに準拠しているデバイスの電源をオフにすれば電力は無駄に消費されず、機能を停止しているデバイスには監視機能によって電力が供給されないため、より安全にデバイスの復旧ができる。
安全性
PoEスイッチ自体の電力は、一般的なスイッチと同様に交流(AC)電源から取る。その電力の干渉を避けるために直流(DC)に変換し、LANケーブルで配下のネットワーク機器に届ける。
PoEのDCの電源出力は15.5~90ワットで、選択する規格によって異なる。安全性を確保するため、PoEでは電力を供給し始める前にPSEがテスト用の電気をPDに送り、PDの電力レベルを確認してからそれに合わせて給電する。そのため、余分な電力の消費を抑えることができる。
セキュリティ
PoEを導入しても、企業のセキュリティに直接の影響はない。しかし、PoEに準拠したデバイスは比較的新しい時期に開発されたデバイスであるため、結果的にセキュリティ上の脆弱(ぜいじゃく)性が少ない傾向にある。さらにセキュリティ対策用ツールとも連携がしやすい傾向にある。
コストの削減
UCの管理者は、規格、ポート数、ネットワークを届ける範囲、電力、ケーブル当たりのコストなど、複数の要因に基づいて予算を策定する。PoEを使用すれば、追加の電源ケーブルや関連デバイスを設置する必要がなくなり、消費エネルギーとコストの両方を抑えることができる。
企業はUCでPoEを使用するという選択を、リモートオフィスや停電が頻発生する地域、電力供給が難しい場所(遠隔地、高地、水域の近く、へき地など)で特に重宝する。PoEは企業のインフラ移行作業に伴うコストの削減にも役立つ。
次回はPoEを導入するデメリットについて解説する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
3
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
4
IT製品の導入に関するアンケート「セキュリティ」編
-
5
「Windows 10」が入ったままの“Windows 11未移行PC”に残された延命手段
-
6
“アジャイルの壁”に挑むオリックス生命がIBMの開発管理ツールを選んだ理由
-
7
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
-
8
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
9
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
10
Windows 11“なぜか勝手に再起動”の真犯人は「更新プログラム」だった?
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
7
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー