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「HDDの次なる進化」をもたらす“HDD部品の大改良”とは?HDDは“技術的限界”を突破できるか【前編】

HDDベンダーはHDD内部の部品にさまざまな技術進化をもたらすことで、保存容量の増大や読み書き性能の向上を実現してきた。次なるブレークスルーの種はどこにあるのか。HDD内部の、ある部品に注目する。

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 データ保存容量の増大や、読み書き速度の高速化といったストレージの要件に応えるために、HDDベンダーはHDD内部の部品にさまざまな改良を加えてきた。容量30TBや40TBのHDDを使うことが一般的になる時代に向けて、次なる進化の種になるのがHDD内部の“ある部品”の改良だ。

HDDの内部構造と、次なる進化をもたらす大改良

 HDD内部には、データの記録や読み書きを担う幾つものが部品が搭載されている。主要な部品としては以下がある。

  • 複数枚のプラッタ
    • プラッタは円盤状の記録媒体
  • 磁気ヘッド
    • データの読み書きを担う装置
  • アクチュエーターアーム
    • 磁気ヘッドをプラッタ上の特定の位置に移動させる装置
  • アクチュエーター
    • アクチュエーターアームを動かすための装置

 HDDの保存容量やデータ読み書きの速さといった重要な指標に影響する要素は幾つかあり、HDDベンダーはそれぞれ独自の手法で改善に挑んでいる。その一つが、アクチュエーターだ。

 大半のHDDは、アクチュエーターを1つしか使用しない「シングルアクチュエーター」を採用している。アクチュエーターは、HDD内でデータ読み書きの作業を担う磁気ヘッドを動かし、プラッタにあるデータへのアクセスを制御する上で欠かせない装置だ。アクチュエーターがプラッタ上の異なる位置にあるデータに、どれだけ効率よくアクセスできるかがHDDの読み書き性能を左右する一つの要因となる。

 アクチュエーターは、HDDの容量を増やす技術とは直接的な関係がないものの、間接的な影響はある。HDDの容量を増やす技術としては、プラッタ1枚における記録密度を高める幾つかの技術開発が進んでいる。プラッタにおけるデータの記録密度が高まるほど、データに正しくアクセスするための制御は難しくなる。そのためアクチュエーターの効率が高まったとしても、データの記録密度が高まれば読み書き性能が落ちてしまうという影響が考えられる。

 シングルアクチュエーターの場合、課題の一つになるのは一度に動かせる磁気ヘッドが1つしかないということだ。複数のデータに同時にアクセスすることができない。

 そうしたアクチュエーターに関する“読み書き性能の限界”を突破するために、Seagate TechnologyもWestern Digitalも、新たな手法に挑むことにした。アクチュエーターを2つにする「デュアルアクチュエーター」搭載のHDDを開発したのだ。

 2つのアクチュエーターが独立して動くことで、異なる位置のデータに同時にアクセス可能になる。これによって、システムに対して2台の独立したHDDがあるかのように見せることができるし、より多くのデータ読み書きを同時に処理できるようになる。

 デュアルアクチュエーターを含めて、アクチュエーターを複数搭載するアクチュエーターは「マルチアクチュエーター」と呼ばれている。その技術がより成熟してくれば、将来的には2つよりも多くのアクチュエーターを使用するのが一般的になる可能性がある。

 これから先、必要になるHDDの今後の進化の方向性として、容量がより大きくなることと、読み書き速度がより高速になることが重要だ。そうした進化を促す上でも、マルチアクチュエーターは欠かせない存在になると考えられるのだ。


 次回は、マルチアクチュエーターのより詳細な仕組みと、どのようなHDDの用途で特にマルチアクチュエーターが求められているのかを解説する。

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