いまさら聞けない「ホワイトボックススイッチ」の基礎知識:ホワイトボックスネットワークの始め方【前編】
ネットワーク管理のコスト削減と作業の簡素化には、「ホワイトボックスネットワーク」が役立つ可能性がある。ホワイトボックスネットワークとはどのようなものなのか。その基本を解説する。
ホワイトボックスネットワークは、特定ベンダーの製品に依存しないノーブランドのネットワーク機器を使ったネットワークを指す。ホワイトボックスネットワークを構築するためのハードウェアの一例が「ホワイトボックススイッチ」(ノーブランドのネットワークスイッチ)だ。主にODM(他社製品の設計から製造までを引き受けるメーカー)が、ホワイトボックススイッチを製造している。
ホワイトボックススイッチとはどのような要素で構成され、何ができるネットワーク機器なのか。その基本を解説する。
「ホワイトボックススイッチ」とは何か? その多様な役割とは?
企業がホワイトボックススイッチを導入する場合、機器専用のOSではなく、独自のOSを搭載することになる。具体的には、スタンドアロン型のネットワークOS(NOS)や、データプレーン(データ転送を担う部分)デバイス用OSが対象だ。これらのOSは、ホワイトボックススイッチをアンマネージドスイッチ(複雑な設定を必要としない基本的な通信機能のみを備えたネットワークスイッチ)にする。
データプレーンデバイス用OSは、ネットワークスイッチをソフトウェア定義ネットワーク(SDN)の一部にする。SDNは、ネットワークの制御機能をハードウェアから分離し、ソフトウェアで制御可能にする技術のことだ。
NOSの例を以下に挙げる。
- オープンソースで無償のNOS
- オープンソースソフトウェアの開発と普及を促進する団体Linux Foundationの「OpenSwitch」(OPX)
- データセンターで利用するハードウェアのオープン化を目指す団体Open Compute Project(OCP)の「Open Network Linux」(ONL)
- ネットワーク機器ベンダーが提供するNOS
- Arista Networksの「Arista Extensible Operating System」(Arista EOS)
- Pica8 Softwareの「PicOS」
ホワイトボックススイッチの中核を成すのが、BroadcomやIntelなどの半導体ベンダーが提供する汎用(はんよう)ネットワークチップ(「マーチャントシリコン」とも)だ。ODMは汎用ネットワークチップと「x86」系CPUを組み合わせてホワイトボックススイッチを製造している。ホワイトボックススイッチはODMから直接購入するか、付加価値再販業者(VAR)から購入可能だ。
一部の大手ネットワーク機器ベンダーは、自社が知的財産権を持たないネットワークスイッチも販売している。そうしたネットワークスイッチは「ブライトボックススイッチ」(「グレーボックススイッチ」とも)と呼ばれ、販売元ベンダーによる品質チェックやサポートの対象だ。
ホワイトボックススイッチは、ネットワークにおいて多様な役割を担う。以下に役割の例を挙げる。
- コアスイッチ
- ネットワークの中核として利用
- エッジスイッチ
- ネットワーク内の端末で利用
- ディストリビューションスイッチ
- コアと端末をつなぐ中間部分で利用
- リーフスイッチ
- エンドポイントデバイスに直接接続
- スパインスイッチ
- 複数のリーフスイッチを相互接続
以下はホワイトボックススイッチが実行できるタスクの代表例だ。
- パケット(ネットワークで送受信するデータの伝送単位)を送信するネットワークスイッチ機能
- ファイアウォールのようにパケットをブロックする機能
- ロードバランサーのようにパケットを分散する機能
次回はホワイトボックススイッチのメリットと、ホワイトボックススイッチを使ったネットワークの構築方法を紹介する。
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