「理系女性の働きやすさ」はどう変わったのか?:STEM分野における女性活躍の現状【第1回】
男性中心のイメージが強いSTEM(科学、技術、工学、数学)分野だが、社会全体がダイバーシティー推進へとかじを切る中で、女性の働きやすさに変化が起き始めている。
近年、幅広い業界でダイバーシティー(多様性)推進の機運が高まる中で、さまざまな組織が女性の活躍促進に積極的に取り組み、競争力を高めようとしている。本連載は、STEM(科学、技術、工学、数学)職におけるダイバーシティーの現状を7つの観点から探る。“理系女性”にとっての働きやすさはどう変わったのか。
「STEM分野」における女性の働きやすさはどう変わったのか?
1.教育における男女差
STEM分野のキャリアは、教育の段階から始まっている。
米国国立科学財団(NSF)のレポート「Diversity and STEM: Women, Minorities, and Persons with Disabilities」によると、2020年、米国における理工学位取得者数のうち半数が女性だった。一方で、男女比は専攻分野によって大きく異なっていた。2021年に工学の学士号を取得した米国人学生のうち、女性が占める割合は24%で、コンピュータサイエンスおよび情報科学の女性割合は22%だった。
世界銀行が2019年に公開したブログエントリ(投稿)によると、114カ国中107カ国において、STEM分野の卒業生は男性より女性の方が少なかった。
2.雇用における男女差
STEM職の大半において女性は少数派の印象が強い。一方で、米国国勢調査局(USCB:United States Census Bureau)の調査によると、STEM分野における女性労働者の割合は、1970年の8%から2019年の27%へと増加している。
米国労働省(DOL:Department of Labor)の調査によると、2020年時点で、STEM分野で働く女性のうち61%が「社会科学分野」で働いており、「工学分野」で働いているのはわずか15%だった。
注目したいのが、STEM分野における業界横断的な変化の兆しだ。さまざまな企業が、STEM分野の女性で働くキャリアを支援するための教育プログラムを作成しており、米国国家安全保障局(NSA:National Security Agency)をはじめとする政府機関も賛同している。
NSAの従業員体験向上に向けたタスクフォース「Future-Ready Workforce Initiative」でディレクターを務めるクリスティーナ・ウォルター氏は次のように話す。「NSAでは、優れた女性リーダーが多く働いている。しかし、特にNSAのような軍事組織において、女性が意思決定の場に参加して活躍するには幾つかの障壁が存在する」
「女性のアイデアや意見を生かせるような組織環境を整備することが重要だ」とウォルター氏は主張する。特にNSAのような政府機関では、米国民の意見を業務に適切に反映するために多様な人材を採用すべきだ、というのが同氏の意見だ。
ウォルター氏のグループは過去数年にわたり、採用者の40%以上を女性にするという目標を達成しているという。NSAのサイバーセキュリティに関する官民連携の取り組み「Cybersecurity Collaboration Center」では、メンバーの半数以上が女性で構成されている。
3.人種と民族による雇用差
米国国立科学財団(NSF:National Science Foundation)が2021年に公開したブログエントリによると、米国における25歳以上の労働人口のうち、アフリカ系米国人は11%、ヒスパニック系米国人は17%を占めるが、STEM分野ではそれぞれ9%と8%を占めるのみだ。
一方で、米国連邦政府が2023年に発表した調査「Diversity and STEM: Women, Minorities, and Persons with Disabilities」によると、こうした状況にも変化の兆しが見える。2011年から2021年にかけて、高等教育におけるSTEM科目の選択と、STEM分野への就職の両方で、特にヒスパニック系の占める割合が増加していた。
次回は、職場での定着率やリーダーシップの観点で、STEM分野における働く女性の現状を解説する。
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