オンプレミスに「as a Service」がもたらす進化とは? HPE GreenLakeで考察:“クラウドの利点”をオンプレミスで再現
ユーザー企業はオンプレミスインフラにもクラウドサービスのような利点を求めるようになっている。どのような変化があるのか。HPE GreenLakeを参考にして考える。
ITインフラのモダナイゼーション(近代化)が企業にとっての悩ましい課題となる中、クラウドサービスの利点をオンプレミスインフラで再現しようとする動きが目立っている。オンプレミスインフラにどのような変化があるのか。Hewlett Packard Enterprise(HPE)のオンプレミスインフラ向けサービス群「HPE GreenLake」を参考にして考えてみよう。
オンプレミスに「as a Service」がもたらす進化とは
HPE GreenLake は、オンプレミスインフラを従量課金型で提供するサービス群だ。HPE は近年、HPE GreenLakeに次の製品を追加した。
- HPE GreenLake for Block Storage
- スケールアウト型ブロックストレージ。複数台のストレージを連携させて論理的な1つのシステムとして動かすことが可能。
- 従来型のストレージ(スケールアップ型ストレージ)でも複数台のストレージを論理的に束ねて容量を拡大することは可能だが、スケールアップ型ストレージの容量拡張は、ストレージを制御するコントローラーが管理可能な数までに制限。
- スケールアウト型はストレージだけではなくコントローラーの数も拡張できるため、より大容量の構成が可能。
- HPE GreenLake for File Storage
- ストレージベンダーVast Dataと提携して開発したファイルストレージ。
- 機械学習などの人工知能(AI)技術やハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、データレイクに関係するアプリケーション向けのストレージ。「生成AI」(ジェネレーティブAI)や大規模言語モデル(LLM)の開発や学習など、一般的に膨大なデータを必要とする用途に活用可能。
- HPE Alletra Storage MP(マルチプロトコル)
- OSを切り替えることでブロックストレージとしてもファイルストレージとしても利用できるストレージ。
- 2U(ユニット)サイズの筐体(きょうたい)にフラッシュストレージや入出力(I/O)操作を制御する「I/Oモジュール」を、任意に組み合わせて構成可能。
興味深い変化は、HPE GreenLake for Block StorageとHPE GreenLake for File Storageは、製品購入型と従量課金型を選択できるようになったことだ。前者はCAPEX(資本的支出)型、後者はOPEX(事業運営費)型と表現できる。従量課金型を採用することで、自社の必要に応じてインフラの利用量を調整することができる。
クラウドサービスをオンプレミスインフラで再現
オンプレミスで利用するハードウェアを、マネージドサービスや従量課金制で提供するベンダーは増加傾向にある。ベンダーは、クラウドサービスの特性をオンプレミスインフラで再現しようとしている。
米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)が企業のIT部門を対象に実施した調査では、オンプレミスインフラで「as a Service」型のサービスを利用するメリットとして以下が挙がった。
- コストを繰り越し可能になったことで、ITプロジェクトの進展が加速
- 作業をアウトソーシングすることで、運用以外に人材を配置
HPE GreenLakeからは、オンプレミスであってもクラウドサービスのようなアーキテクチャで運用できる仕組みを構築しようとしているHPEの意図が伺える。例えばハードウェアをモジュール構造にして標準化する一方で、「ソフトウェア定義ストレージ」(SDS)を充実させることは、運用効率の向上につながると考えられる。
HPE GreenLakeのインフラには、従来型の製品と比べて以下のメリットが期待できる。
- ハードウェアの標準化による在庫管理の効率化およびコスト削減
- ハードウェアの標準化とモジュール形式の採用による容量や機能拡張の容易化
ただし、これらのメリットには全て「可能性」という言葉が付きまとう。こうしたメリットはハードウェアの標準化によって実現する可能性のある一例に過ぎない。HPEがこうしたメリットの提供に成功するかどうかを判断するには、しばらくの年月が必要となる。それでも、HPEの考え方は賢明であり、特にITエンジニアには好まれるはずだ。
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