高まる「クラウド不信」でサーバベンダーが“独り勝ち”の理由:生成AIで絶好調のサーバベンダー【前編】
生成AIに関心が集まる一方で、クラウドベンダーに自社のデータを渡すことを警戒している企業は珍しくない。生成AIの需要増から、サーバ業界に変化が起きている。
テキストや画像を自動生成するAI(人工知能)技術「生成AI」(ジェネレーティブAI)や、さまざまな用途に活用できる汎用(はんよう)的なAIモデルである「基盤モデル」への注目が集まっている。こうした動きを背景に、複数のサーバベンダーの経営幹部が、「サーバ業界は転換点に立っている」と考えている。
生成AIや機械学習で利用するサーバの需要は拡大している。ユーザー企業はAI関連の処理を高速化するGPU(グラフィックス処理装置)を搭載したHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)用ハードウェアや、GPUを搭載したサーバ(以下、GPUサーバ)を求めるようになった。背景には、ユーザー企業がAI技術に関心を深めていることだけでなく、クラウドベンダーへの不信がある。
ユーザー企業が「クラウド」に抱く不信とは?
GPUサーバの需要が拡大する背景には、ユーザー企業がAIモデルのトレーニングに自社の機密データを使用することに慎重になっていることがある。
ユーザー企業はハイパースケーラー(大規模データセンターを運営する事業者)が、生成AIユーザーの知的財産の保護に後れを取っていることに気付きつつある。結果、自社データに基づく基盤モデルのトレーニングを可能にするGPUサーバと、そのベンダーへの関心を強めている。
一部のユーザー企業は、AI関連の処理性能を補助および強化する「AIアクセラレーター」として機能するGPUサーバを採用した、プライベートクラウドの構築や運用に関心を示している。
Hewlett Packard Enterprise(HPE)とGPUベンダーのNVIDIAは近年、戦略的に協業している。両社は2023年11月30日(米国時間)、生成AIに特化した企業向けコンピューティングサービスの提供を開始すると発表した。これによってHPEは、生成AI用のインフラと、AIチューニングおよび推論システムなどをまとめて提供できるようになった。
以前からHPEとNVIDIAは、AIチューニングおよび推論を目的としたハードウェアとソフトウェアを開発しており、ユーザー企業が自社の機密データを活用したアプリケーションをさまざまな場所に配置できるようにしている。
HPEのプレジデント兼CEO、アントニオ・ネリ氏は次のように述べる。「生成AIの台頭を受けて、ユーザー企業はAIモデルを効果的に実行するための全く新しい技術的な手法を求めている」
後編はサーバベンダーのLenovoとDell Technologiesの動向を解説する。
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