ITエンジニアは「技術力を磨くだけ」ではもう生き残れない訳:これから活躍できる人材とは【前編】
IT人材は「ITスキル」を磨くだけでは、もはや十分ではない時代に突入しようとしている。企業がIT人材に求める新たなスキルと、その背景にある要因を探る。
IT人材の需要は、一見すると高まる一方だ。米国労働省(DOL:Department of Labor)でシニアITリーダー兼ストラテジストを務めるエドワード・メイマン氏は、「IT業界は今後5年間で大きく成長する」と推測する。背景にあるのはAI(人工知能)技術やクラウドコンピューティングの利用拡大、サイバーセキュリティ分野の進歩、テレワーク向けの技術の普及などだ。
だがITエンジニアはその朗報に安心してはいけない。IT人材に求められるのは、もはや技術力だけではないからだ。IT人材の需要はこれからどう変わるのか。
ITエンジニアはなぜ「技術力を磨くだけ」では生き残れないのか
メイマン氏は、企業が人材に求めるものとして以下を挙げる。
- 高度なITスキル
- 革新的なアイデアや技術を使って新たな価値を生み出す能力
- 与えられた環境に適応する力
- 継続的な学習
- 資格の取得
- 最新技術の速やかな理解
進化し続けるIT製品やサービスを理解して運用、管理することがIT部門の職務であることに変わりはない。一方で、ITを専門としない従業員がアプリケーションを開発する動きは広がりつつある。ニューヨーク大学(New York University)の最高情報責任者(CIO)を務めるドナルド・ウェルチ氏は、この傾向は今後も続くと考える。「私たちは市民開発者の台頭を目にすることになるだろう」(ウェルチ氏)
AI技術が進歩すれば、IT部門が担ってきたテクニカルサポートの必要性は減るとウェルチ氏はみる。そうした中でセキュリティ対策はますます重要になると予測される。だからといって、企業がセキュリティの専門家を雇うようになるわけではない。セキュリティ分野専門のITベンダーに外部委託する流れが加速する見込みだ。その結果セキュリティベンダーは拡大し、新たな需要に応じたサービスを提供するようになる。AIエンジニアも、AIソフトウェアベンダーでの需要が増加する可能性がある。
「IT部門自体を大きくする必要はない。社内外の人材を使って、IT部門をより戦略的に活動できる組織にすることが重要だ」という意見もある。
人材会社People Projectの創業者でマネージングパートナーを務めるジョディー・ジェファーソン氏は、経営の観点からCIOはそれほど多くの人材をIT部門に配置したいと思っていないと推測する。採用するのであれば、ITスキルに加えてコミュニケーションスキルや経営の知見を持つ多才な人材を求めているのだという。
「AI技術を使った価値の創出を進める上では、高いITスキルを持つだけではなく、企業倫理や戦略的思考、継続的な学習能力を持つ人材が求められることになる」(ジェファーソン氏)
後編は、将来的に需要増が見込まれるIT関連の職種を7つ紹介する。
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