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「生成AIとデータの関係」をより深く理解できる、“ベクトル”の基礎知識AI時代のデータベースの選び方【第3回】

生成AIを活用するための基礎知識として重要性が高まっているのが「ベクトルデータベース」だ。“ベクトル”とは何かを踏まえて、ベクトルデータベースの基本を解説する。

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人工知能 | データベース


 テキストや画像を生成する人工知能(AI)技術「生成AI」のベースとなる大規模言語モデル(LLM)。そのLLMの回答精度向上において重要な役割を果たすのが「ベクトルデータベース」だ。「ベクトル」とは何かを含めて、生成AIを活用する上で押さえておくべきベクトルデータベースの基礎知識を解説する。

生成AIとデータの関係とは? 鍵を握る「ベクトル」を理解する

 コンサルティング企業Nuvalence(2024年4月にErnst & Young Globalに統合)の共同設立者であるシンクレア・シュラー氏は、「ベクトルデータベースは、数学エンジンとして捉えるべきだ」と話す。

 ベクトルデータベースは、ベクトル形式(数値のリストや配列)でデータを管理するデータベースだ。ベクトルは、データの特徴量を表現するために使われるもので、次元数が多いほどデータの詳細な特性を捉えることができる。ベクトルデータベースには、数百から数千もの次元を持つ「高次元ベクトル」が格納されている。

 ベクトルを保持することで、自然言語のクエリ(問い合わせや命令)に基づいた類似検索が可能になる。類似検索とは、データとクエリとの類似性を計算し、その類似度が高い順に検索結果を並べる方法だ。ベクトルデータベースのインデックスはこうした類似度の指標(類似度メトリック)を中心に設計されており、異なるデータやオブジェクトがどれだけ似ているかを数値的に評価できる。

 コンサルティング企業PricewaterhouseCoopers(PwC)でデータおよびアナリティクスのプリンシパルを務めるブレット・グリーンシュタイン氏は、「LLMの回答精度を向上させるために、ベクトルが重要な役割を果たす」と話す。

 LLMが学習した概念をベクトルで数値的に表現し、ベクトル間の距離や類似度を測ることで、概念の比較や関連性を評価することができる。「ベクトルの概念は複雑に見えるが、実用的な解決策であり、企業の生成AIアプリケーションに効果的に適用できる」とグリーンシュタイン氏は話す。

 具体的な例として、犬と猫について説明する場合を考えてみよう。ペットとしての犬と猫は類似性が高いため、ベクトル空間では近い位置にある。一方で、生物種の観点からは、猫と虎は同じ科に属するため、ベクトル空間でも猫と虎の方が犬と猫よりも近い位置にある。このようにベクトルは、異なるトピックにおける類似概念の関係も明らかにできる。

 ベクトルデータベースを使うことで、データのエンコード(データを他の形式に変換する)処理の精度や、LLMがプロンプトを理解する能力が向上する。これによって、生成AIアプリケーションの精度や応答の質も向上する。データの可能性を最大限引き出したいと考える企業は、ベクトルデータベースの採用を検討すべきだ。


 次回は、ベクトルデータベースを扱う際の課題について解説する。

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