NTTドコモ×NECが「Open RAN」で切り開く“通信の未来”とは:5Gサービスとの関係は?
5Gインフラの仕様として「Open RAN」が支持を集めつつある。NTTドコモとNECはOpen RANの仕様に基づいた製品や付随するサービスを提供する新会社を設立した。その狙いとは。
NTTドコモとNECは、2024年4月1日に合弁会社「OREX SAI」を設立した。OREX SAIは、無線基地局の仕様のオープン化と標準化を目的としている。具体的にはオープンな無線アクセスネットワーク(RAN:Radio Access Network)である「Open RAN」の海外展開を加速するためのサービスを提供する。OREX SAIを通じてNTTドコモは何を実現したいのか。そもそもOpen RANとは何か。
ドコモ、NECの狙いは? そもそも「Open RAN」とは?
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Open RAN市場の未来
RANはスマートフォンやPCなどのデバイスから受け取った通信データを整理整頓し、通信事業者が保有するネットワークである「コアネットワーク」に引き渡す役割を持つ。RANを構成する機器同士のプロトコルやインタフェースはベンダーによって異なることがあり、相互接続性や相互運用性に課題があった。
Open RANとは、異なるベンダーの機器やソフトウェアが相互接続できるように標準化された、オープン仕様の基地局を介したRANだ。NTTドコモとパートナーはOpen RANの仕様に基づいた製品およびサービスのブランド「OREX」を提供している。
OREX SAIはOREXブランドの仮想化基地局や無線装置、それらを制御するソフトウェア「Service Management and Orchestration」(SMO)などを提供する。OREXによって構築したネットワークの運用や保守もサービスとして提供する。
NTTドコモはOpen RANの普及に向けて中心的な役割を果たしてきた。2018年2月にNTTドコモは、世界各国の通信事業者と提携し、RANのオープン化を目指す業界団体「O-RAN Alliance」を設立した。2020年3月には日本で全国規模のOpen RANの仕様に基づいた5G(第5世代移動通信システム)サービスを開始し、2023年2月にはOREXブランドを立ち上げた。
OREXのエコシステム
OREX SAIは2024年4月に設立し、海外の事業者を対象としてOREXサービスを提供する計画だ。OREX SAIはOREXパートナーとして、各ベンダーと連携しながら、顧客のニーズに合わせた最適な商品とサービスを提供する。
NTTドコモは「OREX SAIの取り組みを通じてOpen RANを早期に導入する」と述べている。世界各国のパートナーとの協力関係も強化し、オープンなエコシステム(複数の企業による共存共栄の仕組み)を活性化すると述べている。
NTTドコモとNECはOpen RANの普及に向けてOREXパートナーグループと共に、検証設備の建設や接続試験の実施などで協力してきた。2024年2月時点では以下の16社がパートナーとして名を連ねている。
- Amazon Web Services(AWS)
- Advanced Micro Devices(AMD)
- Arm
- Dell Technologies
- 富士通
- Hewlett Packard Enterprise(HPE)
- Intel
- Marvell
- Mavenir Systems
- NEC
- NTTデータ
- NVIDIA
- Qualcomm Technologies
- Red Hat
- VMware(Broadcomが買収)
- Wind River Systems(Aptivが買収)
OREX SAIは無線装置(RU)のパートナーやデリバリー(サービスの調達や提供)に特化したパートナーとも協力している。
IOWN構想
NTTドコモが所属するNTTグループは光ベース技術のネットワーク構想「IOWN」を計画している。
IOWNは光学(フォトニクス)技術を活用した「オールフォトニックスネットワーク」(APN)によって、従来のネットワークに比べて消費電力や伝送容量、遅延の改善を図る。「APNはネットワークからデバイスに至るまで光学技術を採用する」とNTTは明らかにしている。
IOWNはクラウドインフラからエッジコンピューティング、デバイスまでのITリソースを一元的に管理するインフラでもある。あらゆるITリソースを場所やアプリケーションに応じて最適化するように制御する「コグニティブファウンデーション」を目標としている。
IOWNの取り組みから得られる教訓は、次世代の電気通信ネットワークの研究や開発はまだ始まったばかりということだ。特にIoT(モノのインターネット)では、消費電力の効率化が重要であり、これからもさまざまな技術開発や取り組みが期待されている。
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