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iPhoneユーザーが「Apple Intelligence」を素直には歓迎できない訳:OpenAIとApple提携の影響【第4回】
Appleは「Apple Intelligence」の提供において、OpenAIとの提携を発表した。これによりさまざまなメリットがもたらされる一方で、懸念点も浮上している。エンドユーザーにとって喜べない点とは。
Appleは人工知能(AI)ベンダーOpenAIとの提携を公表している。Appleが「iPhone」や「Mac」に組み込んで提供するAIシステム「Apple Intelligence」から、OpenAIの生成AIツール「ChatGPT」の機能を利用できるようになる。この2社提携の結果、メリットだけでなくデメリットも出てくると想定される。今回の発表が、エンドユーザーや市場関係者にとって必ずしも喜べるものではないのはなぜなのか。
iPhoneの「ChatGPT連携」はうれしいことだけじゃない
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連載:OpenAIとApple提携の影響
- 第1回:なぜ自前主義のAppleが「OpenAIとの提携」に踏み切ったのか
- 第2回:AppleのAI新機能「Apple Intelligence」は結局「ChatGPT」と何が違うのか?
- 第3回:iPhoneが搭載する「ChatGPT連携」は本当に“便利で安全”なのか?
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AppleとOpenAIの提携による懸念事項には、以下のようなものがある。
- プライバシーとセキュリティの懸念
- 規制当局やOpenAIの元従業員は、AppleとOpenAIがどの程度データ共有をしているのか、エンドユーザーのプライバシーがどのように保護されるかについて疑問を呈している。実業家のイーロン・マスク氏は、ChatGPTがAppleのOSに組み込まれた場合の、潜在的なセキュリティリスクについて強い懸念を表明した。
- 透明性の懸念
- OpenAIのサーバに送られたエンドユーザーデータは適切に削除されているのかどうか、Appleがどうやって確認するのかといった懸念がある。欧州と日本の規制当局は、安全性を確保するため、Appleに対して外部からの監視を求めている。
- ベンダー社内における混乱
- OpenAIでは、同社のAI技術を急速に展開することへの懸念から、幹部の離職や会社の方向性についての対立が発生している。
- 法的な懸念
- 業界の専門家は、2社の提携がAI市場の競争に与える影響について懸念を抱いている。2024年7月時点で、Appleと米司法省の独占禁止法違反の訴訟は継続中であり、今回の提携は規制当局の監視を受ける可能性がある。
- デバイスに与える影響の懸念
- ChatGPTがAppleの機能と連携することで、Apple製デバイスの動作速度に影響を与えることが懸念されている。
- 中国内での提供の懸念
- 中国における生成AIへの規制は厳しく、同国内でのChatGPT利用は禁止されている。この禁止措置はAppleにとって大きな問題だ。AI機能が一部しか提供されない場合、中国の消費者をApple製品からさらに遠ざける可能性がある。
一方で、AppleとOpenAIの提携は、生成AI市場に以下のような影響をもたらす可能性がある。
- 利用の拡大
- Appleの機能から連携することで、ChatGPTの利用が加速する可能性がある。
- 監視の強化
- より多くのエンドユーザーがChatGPTを利用することで、安全性やプライバシーのリスク、倫理的懸念に関する監視の目が厳しくなると考えられる。
- プライバシー管理のスタンダード確立
- AppleがChatGPT利用時のプライバシー保護をどう実施するかは、他ベンダーがAI技術を活用する際の指針となる可能性がある。
- AI市場の競争激化
- AppleとOpenAIの提携を受けて、他のIT企業も同様の提携を結んだり、自社のAI開発を加速させたりするきっかけになる可能性がある。
- AI投資の増加
- AppleとOpenAIの提携に対する市場の好意的な反応は、IT業界における生成AIへのさらなる投資を促す可能性がある。
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