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「ITエンジニア不足」は採用ではなく“育成”のせいだった?人材採用という選択肢を捨てる【中編】

ITエンジニア不足がさまざまな企業において課題の一つになっている。採用によって人材を確保する手もあるが、長期的に見てそれが最適な手段になるとは限らない。人材流出の抑止にかじを切った企業の例を紹介する。

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 十分なスキルを備えるITエンジニアを確保することが、さまざまな企業において課題の一つになっている。採用は人材不足を解消する一つの手段になるものの、長期的に見るとそれが必ずしも最適な選択肢とはならない場合がある。ある理由から、採用ではなく育成に着目した企業の例を紹介する。

ITエンジニア不足の真因は“育成”にこそあり?

 LEDネオンサインの製造と販売を実施するCustom Neonは、ITの急速な進化に対処するに当たって2つの選択肢を検討した。1つ目は競争の激しいIT人材市場から人材を採用すること。2つ目は、従業員に対して学習やスキル向上のための支援策を提供することだ。同社は2つ目の施策を選択した。

 Custom Neonで最高技術責任者(CTO)を務めるマット・エアド氏は、新しい従業員を継続的に採用するのには費用がかかるだけではなく、既存の従業員に良い影響を与えないという懸念があったと明かす。「従業員の能力開発に投資することで、経営層からの期待に応えられるだけの、安定した経験豊富な労働力を確保できるようになる」とエアド氏は語る。

 同氏によると、従業員のスキルアップやクロススキリング(現職以外の分野の専門性を習得すること)、リスキリング(新しい知識やスキルを習得すること)を実施するに当たり、同社が効果的だと判断したのは以下2つの施策だ。

  • 部門横断型プロジェクトの作成
  • メンタリング実施の支援
    • メンタリングは、知識や経験のある技術者が未経験者を助言・指導すること。

 部門横断型プロジェクトは通常半年〜1年間実施し、10〜12人の従業員が参加する。プロジェクトの一つが、IT部門とマーケティング部門の従業員が協力して取り組む予測分析ツールの開発だ。同社はこのツールによって、顧客の好みや行動を理解しやすくなり、消費者向けマーケティング施策のターゲット選定プロセスを改善することができた。

 部門横断型プロジェクトに参加したIT部門の従業員は、自分の専門性を発揮することに加え、製品の製造やカスタマーサービス、マーケティングといった他分野の業務に定期的に触れる機会を得た。「このような経験を経た従業員は、企業へのエンゲージメントを高めるだけではなく、自社全体の成功と自身の成功の両方に価値を求める可能性が高い」(エアド氏)

 メンタリングの実施に際しては、IT部門の経験の浅い従業員が、プロジェクト管理や営業といったIT以外の分野で経験を持つ従業員とペアを組む。その目的は、指導力をはじめとしたソフトスキルの育成を支援することにある。

 その他、同社独自の手法である「継続学習メソッド」は、小規模な変更を短期間のうちに繰り返す「アジャイル」手法に基づいている。その狙いは、従業員のエンゲージメントを高めることや、イノベーションを主導できる人材を育成することだ。

 エアド氏は社内調査の結果を基に、こうした施策のメリットを挙げる。Custom Neonの社内調査によると、2021年からの過去3年間で従業員満足度は70〜85%に上昇した。従業員の定着率も75〜85%まで上がった。離職率は低下し、社外からの採用の必要性も減ったことで、トレーニングと採用のコストは30%減少した。

 メリットは他にもあった。市場や顧客のニーズの変化に迅速に応えられるようになったことだ。「従業員のスキルが向上した結果、より困難な課題に取り組み、部門として成長することもできた」(エアド氏)


 後編は、サイバーセキュリティ人材の獲得に動いた大手通信企業の取り組みを紹介する。

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