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これで人は勝手に育つ 「頑張らないマネジメント」の“5つの法則”波及する“クワイエット”な行動スタイル【後編】

マイクロマネジメントは従業員のやる気を削ぎ、業務の進行に悪影響を及ぼすだけでなく、退職を誘発する可能性がある。その対極にある「静かなマネジメント」を実践するには何をすればよいのか。

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)を契機に生まれたキーワードの一つが「静かなマネジメント」(クワイエットマネジメント)と、それを遂行するための「静かなリーダーシップ」(クワイエットリーダーシップ)だ。部下の業務を細かく管理するマイクロマネジメントから脱却し、静かなマネジメントで成果を出すための“5つの法則”を紹介する。

「頑張らないマネジメント」で人が育つ“5つの法則”とは

 さまざまなことに細かく目を配り続けるマイクロマネジメントの実践に慣れているマイクロマネジャーなら、自ら一歩引いて従業員に業務の手綱を握らせることにためらいを覚える場合もあるだろう。

 静かなマネジメントは、従業員への信頼を基にしている。従業員が自力で業務をこなせると信頼できれば、管理の手を緩めて従業員により多くの自主裁量権を与えられるようになる。

 だが、静かさが度を超してしまう「静か過ぎるマネジャー」にならないようにすることも大切だ。その適切なバランスを取りながら静かなリーダーシップを発揮できるようにするための行動のポイントを紹介する。

  1. 過程よりも結果に注目する
    • 従業員がマイクロマネジメントに抱く不満の一つは、プロジェクトの結果ではなく過程の細かいところまで監督される点だ。一方で、従業員個人がうまくいくと考える方法で業務に取り組めるようにするのが静かなリーダーシップの特徴だ。ただし、「従業員が効率よく効果的に業務の結果を得られる場合」に限る。
  2. 目標を明確にする
    • 入社時の研修や特定の案件において、マネジャーが従業員に期待している目標や条件を明示する。マネジャーと従業員との間で期待する内容に誤解を生じさせずに済み、従業員は自主性をもって働くことができる。Slingshotのレポートでも、42%が「業務の優先順位を明確にすること」、30%が「業務の期限を設定すること」が従業員の生産性に良い影響をもたらすと回答している。
  3. オープンなコミュニケーションを取る
    • マネジャーに質問したり指導を受けたりできることを従業員に再認識してもらう。一対一での面談の時間を定期的に確保することで、案件に関連した課題に対処したり進捗(しんちょく)を確認したりするとよい。ミスを防いだり、より効率的に業務を遂行したりすることにつながるためだ。
  4. 業務の要不要を精査する
    • 不要な会議や進捗の確認は業務の生産性を下げる要因になり得る。Atlassianが公開している調査レポート「Meet the #1 barrier to productivity」によると、回答者の80%が「会議に費やす時間が減れば業務の生産性が上がる可能性がある」と答えた。回答者は4大陸のナレッジワーカー(知識労働者)5000人だ。繰り返し実施している会議の中で、出席者全員が時間を費やす価値があるものと、メールでやりとりした方がよい結果をもたらす可能性があるもの、完全に廃止するべきものに仕分けする。
  5. 従業員の自主性を尊重する働き掛けを実施する
    • 自分より上の役職のマネジャーから、従業員に対してマイクロマネジメントを実施するように圧力をかけられていると感じる場合がある。業務の実態を常に正確に把握できるようにするためだ。マイクロマネジメントを義務化させないために、マネジャーは静かなマネジメントのスタイルや従業員の自主裁量権を支持する立場を表明し、周囲に働き掛ける。過度に管理しなくても業務を遂行できること、そのために従業員がどのようなスキルや資格を持っているか強調するとよい。

静かなマネジメントはあらゆる業界で有効に機能するか?

 静かなリーダーシップは全ての状況や業界に適しているわけではない。従業員それぞれが多様なニーズを持っていることも忘れてはいけない点だ。

 静かなリーダーシップは、ナレッジワーカーやITエンジニア、データアナリストといった、特定のスキルや資格を活用し、自ら業務管理を実施したり自己判断で業務を進めたりすることを求められる従業員には有益に機能する可能性がある。勤務環境を状況に合わせて柔軟に変えることができる業界では、従業員に権限を付与し、マネジャーが従業員を管理する時間を減らすことも可能だ。

 一方で、法規制の準拠を厳しく求められる業界や勤務環境が絶えず変化する業界では、従業員に対する厳格な監視が必要になる。軍需産業や医療業界で静かなリーダーシップを導入すれば、多大な代償を伴うミスや見落としを発生させる可能性が高くなるためだ。

 そうした業界では、マネジャーはより細部まで管理する必要がある。その結果、業務が円滑に進行し、問題に迅速に対処できるようになる。だがそのような場合でも、不要な会議を減らしたり、静かなリーダーシップの理念を活用したりすることは可能だ。

 マネジメントを実施する上で不可欠な要素が柔軟性だ。自分のマネジメントが効果を発揮していないというフィードバックを得たなら、戦略の再評価や見直しを実施する時期に来ている可能性がある。

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