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「SSD売れない」は“ある波乱”の始まりに過ぎなかった?ストレージ業界に変化の予感【中編】

SSDとNAND型フラッシュメモリのベンダーは、2022年から2023年にかけて売上高が大きく落ち込む不況を経験した。そうした中で浮上してきた、業界再編の兆候とも見れる幾つかの変化がある。

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 2022年から2023年にかけてSSDが売れなくなる傾向が顕著になり、SSDとNAND型フラッシュメモリベンダーの業績は軒並み悪化した。そうした中で、業界再編の“火種”と見ることもできる幾つかの変化が起きている。SSD業界は今、どのような局面を迎えようとしているのか。

これから始まるSSD業界の“ある波乱”

 SSDとHDDを手掛けるWestern Digitalは、2024年内にSSDの事業を分社化する方針を明らかにしている。SSDとHDDそれぞれの分野での戦略に特化すると同時に、個々に資金を投入しやすくすることが目的の一つだとみられる。SSD業界で起きようとしている変化はそれだけではない。

 NAND型フラッシュメモリとSSDの製造・販売を手掛けるキオクシアは、2024年内に東京証券取引所へ新規株式公開(IPO)を計画しているとみられる。同社は同年7月には、SSD市場の成長を見込んで日本政策投資銀行から継続的な資金調達の承認を得たことを公表した。

 ストレージ市場調査会社Objective Analysisのゼネラルディレクター兼半導体アナリストであるジム・ハンディ氏は、「キオクシアが上場しても同社の日常のビジネスに大きな変化はない」と述べる。

 調査会社Gartnerのアナリストであるジョセフ・アンズワース氏も同じ見方をしており、「市場全体にすぐに大きな変化があるわけではない」と指摘する。とはいえキオクシアは、新しい工場の建設や設備更新のための資金をIPOを通じて得られる。

 資金調達の観点は重要だ。アンズワース氏は「資金繰りが以前より難しくなっている」と指摘する。世界的なインフレや、米連邦準備制度理事会(FRB)による政策金利の引き上げがコスト増の要因となっているからだ。

 キオクシアのIPOの話は、突然出てきたものではない。キオクシアは東芝のメモリ事業を継承した会社であり、2019年に東芝メモリからキオクシアという社名に変更した。キオクシアの投資家は豊富で、今回のIPOから投資家はハイリターンを望んでいるはずだ。「IPOによって投資家は望む利益を得られるし、キオクシアも自立して成長できる機会を得られる」とアンズワース氏は述べる。

 メモリ業界で浮上しているIPOの計画はキオクシアだけではない。SK hynixの米国子会社であるSolidigmにもIPOの計画がある。Solidigmは、SK hynixが2021年に買収した、IntelのNAND型フラッシュメモリ事業を継承する会社だ。Solidigmは生産設備の拡張に必要な資金を調達するために、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場する計画だ。

 Intelから事業を買収し、Solidigmを設立したことで、SK hynixは企業向けSSD市場に本格的に参入することが可能になった。アンズワース氏は、SK hynixは他のNAND型フラッシュメモリベンダーと比較すると事業が好調だとみている。SolidigmはIntelから引き継いだ企業向けSSDの技術を、ユーザー企業向けにうまく販売している。

 とはいえ、SK hynixとIntelの取引が2021年に完了して以降、地政学的な情勢が変化している。「Intelが保有していた大連工場で生産拡大を進めることには難しさが伴う」とアンズワース氏は語る。Solidigmの今後の動きがさらなる業界の再編を促す可能性はある。


 次回は、Western Digitalが公表している分社化による影響について考える。

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