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可視光や赤外線を使う「光無線通信」のメリットは圧倒的な“あれ”光無線通信の利点と課題【第2回】

可視光線や赤外線を利用する光無線通信には、他の通信方式にはないメリットが存在する。6Gへの活用が検討されている特性もある。

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 可視光線や赤外線、紫外線といった光を利用してデータを送受信する「光無線通信」(Optical Wireless Communication、以下、OWC)によるネットワークを構築するには制約がある。例えば、受信機と送信機の間に遮蔽(しゃへい)物が無い状態である「見通し」(LOS:Line of Sight)の確保だ。

 こうした制約がある一方で、光ファイバーや電波を使った通信に比べて複数のメリットがある。OWCの“7つのメリット”を紹介する。

「光無線通信」の7つのメリット “あれ”が圧倒的?

1.OWCは利用できる帯域幅が広い? 6Gへの活用も

 OWCは無線周波数(RF)と比べたとき、ライセンス不要で広い帯域幅を扱うことができる。

 例えば赤外線の周波数は300GHz〜400THzとなっており、理論上では100THz以上の帯域幅を持つ。可視光や紫外線も同様に、RFと比べて広範な帯域幅が利用できる。

 現実的には、技術と機器の制約や安全上の懸念からこれらの帯域幅を全て活用して通信することはできない。

 将来の「6G」(第6世代移動通信システム)において光無線通信の仕組みを応用することで、「5G」(第5世代移動通信システム)より高速大容量の通信速度を実現できる可能性があると期待されている。

2.複数の標準化済み方式

 OWCでは、主に可視光線(VLC)と赤外線(IR)の一部の帯域を使用する。さらにUVC(超短紫外線)の活用も、LEDなどの固体光源を使って、水中光無線通信、広視野光無線通信といった分野で進んでいる。可視光通信や赤外線を利用した通信方式は標準化されており、主に屋内で利用できる。

3.電磁干渉(EMI)

 EMI(電磁干渉)は通常、OWCが使用する高周波数帯ではなく、低周波数帯に影響を及ぼす傾向がある。ほとんどの場合、EMIはRFで発生する。これは無線周波数干渉として知られている。OWCでは標準的な無線通信のようなEMIが発生しにくい。光は壁などの固体を透過できないので、隣接する部屋同士で同じ周波数を使用したとしてもEMIは発生しない。

 同じ部屋内にNFC(近距離無線通信)による通信機器がある場合、EMIが発生する可能性はある。

4.セキュリティ

 OWCは電波による通信に比べてセル(通信可能範囲)のサイズが小さい。伝送を特定のエリアに限定することでセキュリティを強化できる。そもそも企業は施設内への立ち入りを制限しているため、盗聴されにくくなっているが、OWCの特性がさらにリスクを軽減している。光信号は壁を透過しないため、OWCのハッキングは、仮にそれを試みる者が隣接する部屋にいたとしても困難だ。指向性を持つビームによる通信なら、データは見通し範囲内の受信機にのみ送信される。

5.パフォーマンス

 送信側と受信側で複数の通信用アンテナを同時に使うMIMO(Multiple Input Multiple Output)によって、OWCの通信性能を改善することができる。

 一般的な設計方法として、マルチスポット拡散トランスミッターが用いられている。マルチスポット拡散トランスミッターは、光信号のビームを部屋内の複数の場所に向けて発振する装置だ。これにより、送信機と受信機の正確な位置合わせの必要性が軽減され、より使いやすくなる。通信範囲内でのモビリティー(移動しながらの通信)性が向上し、遮蔽物(しゃへいぶつ)の影響を軽減する。

6.導入コスト

 光スペクトルは規制されていないので、使用にあたってRFのようなライセンス料を支払う必要がない。従来の無線通信機器の代わりにLEDやレーザーダイオードを使用することで、さらにコストを削減できる。

 2000年代以降、住宅や商業施設において、動作時の消費電力や設置や運用のコストに優れるLEDとレーザーダイオードがさまざまな用途で普及している。

7.光ファイバー通信との併用

 光ファイバー通信とOWCを併用することでより効率的なネットワークを構成できる可能性がある。

 OWC用のアクセスポイント(AP)を、施設の任意の場所に設置して、AP同士を光ファイバーケーブルで接続する。このようなハイブリッドネットワーク構成により、光無線通信と有線通信、両方のメリットを使い分けられる。

 指向性のレベルが異なるさまざまなホストデバイスとクライアントデバイスを使い分けることで、ネットワーク全体でのモビリティー性の向上や通信速度の向上を図れる。


 次回は光無線通信のデメリットを解説する。

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