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「IT業界=男性社会」を成り立たせる“男女格差”の根深い問題女性進出を阻むAI【後編】

IT業界における男女格差は積年の課題だ。ダイバーシティー推進の障壁となっている要因は何か。問題を解決し、女性エンジニアが活躍できるようにするために、企業は何に取り組むべきなのか。

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 IT業界における男女格差は、根深い課題となっている。技術の進歩が加速する中、この問題は新たな局面を迎えた。人工知能(AI)技術の台頭により、労働市場の構造が変わろうとしている。

 こうした状況下で、女性がIT分野でキャリアを築き、活躍の場を広げるためには何が必要なのか。解決策を提示するのが、女性向けのプログラミング教育を提供する社会的企業(社会問題の解決を目的に活動する組織)Code First Girlsと、IT分野における多様性(ダイバーシティー)を推進する非営利団体Tech Talent Charterがまとめたレポート「Building tomorrow’s workforce: Inclusive skills development in the age of AI」だ。

 “男性社会”のIT業界で、女性の活躍を後押しする突破口はどこにあるのか。課題と解決策を、レポートに沿って解説する。

IT業界で「男女格差」が埋まらない原因は?

 英国のIT業界における男女格差は根深く、特定の職務やさまざまな役職に性別の偏りが存在する。2023年の英国上場企業でFTSE 100(ロンドン証券取引所上場企業の上位100社)に名を連ねる企業のうち、女性が最高情報責任者(CIO)に就いている企業は27%に過ぎない。

 Code First Girlsによると、企業が上級技術職のダイバーシティーを広げようとする際に障害になるのがスキルの欠如だ。同社のコミュニティーメンバーの意見には、ダイバーシティーを広げる目的で人材を採用しようとしても、そもそも「採用候補者のダイバーシティーが不足していること」が最大の課題になっているというものがあった。これは特定グループがスキル習得の機会に恵まれていない可能性を示唆する。

 上級技術職の採用におけるダイバーシティーの最大の課題は「限られた採用条件」だという意見も、Code First Girlsのコミュニティーメンバーから寄せられた。採用候補者のダイバーシティーが欠けているという事実は、企業が適切な人材を探す場所を間違っている可能性を示す。ただし上級技術職におけるダイバーシティーの実現が困難な理由として、トレーニング不足や特定スキルの不足を挙げたメンバーもいた。IT業界でダイバーシティーが広がれば、スキルギャップは縮小するという指摘が散見されるのも事実だ。

大切なのはトレーニング

 Code First GirlsとTech Talent Charterは、人々、特に女性がAI技術や自動化技術に職を奪われるのを防ぐための継続的トレーニングを推奨する。両組織が提唱するのは、以下の3つのトレーニングだ。

  1. スキルアップ
    • 技術スキルをアップデートするためのトレーニング
  2. リスキリング
    • 社内での職務変更を目的とした、新たなスキルを習得するためのトレーニング
  3. 外部リスキリング
    • 他社への転職を目的とした、新たなスキルを習得するためのトレーニング

 これらのトレーニングを通じて新しいスキルを身に付けることにより、労働者は現職にとどまる目的でも、別の職務に変わる目的でも、失業を防ぐことができる。

 リスキリングとスキルアップは労働者の定着にも役立つ可能性がある。転職を経験したCode First Girlsのコミュニティーメンバーの大部分は、「スキルアップの機会があれば転職しなかった可能性があった」と答えた。女性が最新のスキルを学びながら同じ職務にとどまれば、上級職に昇進する可能性が高まることにつながる。

 スキルトレーニングと職務の育成は個人ごとに状況が違う。コンサルティング会社McKinsey & Companyは2017年時点で、「2030年までに最大3億7500万人が転職を余儀なくされる」と分析した。この数字を受けてCode First Girlsは、「ITが進化や変化を続ける中で労働者が必要なスキルを身に付ける唯一の方法が継続的なトレーニングだ」と指摘する。

 Code First Girlsコミュニティーメンバーの一部は、新しいことを学ぶのに前向きだ。企業がスキルアップやリスキリングの機会を提供することで、採用候補者の層を広げると同時に、IT業界におけるダイバーシティーの格差を解消できる可能性がある。

 Tech Talent Charterの共同CEOカレン・ブレーク氏は、「IT業界は絶え間なく変化するため、将来に向けてインクルーシブなスキル育成プログラムを作成することが重要だ」と語る。企業がダイバーシティーを受け入れることで、新興技術の潜在能力を最大限に引き出し、バックグラウンドに関係なく誰もが成功し、有意義な貢献ができる未来を創造できるようになるという。

 ブレーク氏が企業に推奨するのは、スキルアップとリスキリングの積極的な実施と生涯学習の支援に取り組み、労働者のさまざまなスキルに価値を見いだすとともに、個人の違いを奨励する環境を整えることだ。「インクルーシブなスキルアッププログラムを提供することは、格差を埋めるだけではなく、進歩と繁栄への道を切り開くことができる」と同氏は強調する。

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