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「脱COBOL」より「活COBOL」こそ“賢い選択”になり得る理由AI時代にメインフレームを再考する

「IBM Z」をはじめとするメインフレーム製品の進化が「脱COBOL」の風潮に一石を投じている。メインフレームから企業が学ぶべきAI活用のヒントを解説する。

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 長年にわたり重要システムの中核を担ってきたメインフレームが、人工知能(AI)技術の利用が一般化する時代に、改めて注目を集めている。IBMは、メインフレーム「IBM Z」のAI処理を高速化するプロセッサ「IBM Telum II」(以下、Telum II)と、AIアクセラレーター「IBM Spyre」(以下、Spyre)を2025年までに提供する計画だ。

 こうしたメインフレーム製品の進化は、さまざまな組織が使用してきたプログラミング言語「COBOL」からの移行を意味する「脱COBOL」に一石を投じる。そこには企業がCOBOLから改めて学ぶべきものがある。

なぜ「脱COBOL」より「活COBOL」こそ賢い選択になり得るのか?

 IBMが開発したTelum IIは、AI関連の処理を高速化するAIアクセラレーターを8つ搭載しており、各アクセラレーターは毎秒24兆回の計算を実行できる。これは、第1世代のTelumのおよそ4倍に相当する。

 IBMはTelum IIの性能を高めるため、Telum IIに搭載するデータ処理装置(DPU)の「I/O(データの入出力)アクセラレーションユニット」に、Telum IIの一部タスクをオフロードする仕組みを採用している。ネットワークやストレージに関連するトラフィックの処理を任せることで、Telum IIは主にトランザクションやデータベースのクエリ処理に集中できる。

 Spyreは32個のAIアクセラレーターで構成されており、Telum IIより大規模なAIモデルを動かすことが可能だ。Telum IIと連携して動作することで、金融機関や通信事業者、小売事業者、航空会社など、幅広い業界におけるAIアプリケーション活用を支えると見込まれている。

 クレジットカード会社による不正取引調査の例を考えてみよう。Tellum IIのAIアクセラレーターを使って、10万〜100万個のパラメーター(機械学習の調整に利用するための数値)を持つAIモデルを稼働する。疑わしい取引が見つかった場合は、パラメーター数1億個のAIモデルで検査し、不正取引の可能性をスコア化する。スコアの高い取引は拒否され、スコアの低い取引は処理するという仕組みだ。

 医療機関の例もある。がんの種類と進行度を判断するAIモデルがメインフレームで稼働し、病理検査の画像を解析する。機密性の高い医療情報を別のシステムに送らずに分析できるようになる。

「メインフレーム」を改めて見直す動き

 メインフレームを使用するのは、企業売上高ランキング「Fortune 500」に名を連ねる企業が中心であり、小規模な企業がメインフレームに移行するとは考えにくい。メインフレームを使う上では、COBOLの専門知識やノウハウが欠かせないという壁もある。

 一方で、調査会社Gartnerでアナリストを務めるチラグ・デカテ氏は、「企業がAIシステムを構築する際は、メインフレームの仕組みや設計に注目すべきだ」と強調する。メインフレームの特徴は、トップレベルのレジリエンス(回復力)と信頼性だ。AIアプリケーションを運用する企業にとって、その仕組みを理解することは非常に有意義だ。

 企業はAIを稼働する際に、コンポーネント(部品)やドライバの障害に悩まされる傾向にある。単にGPUファームを構築するだけでは十分ではない。「既存システムのレジリエンスを向上させる上で、メインフレームの設計から学ぶ点は多い」とデカテ氏は話す。

 IBMのZシステムアーキテクチャおよび設計担当のCTO(最高技術責任者)を務めるクリスチャン・ジャコビ氏によると、IBMの顧客企業100社以上がメインフレームへのAI導入を進めており、その取り組みは概念実証(PoC)からテスト、本番運用まで、さまざまな段階にある。

 メインフレームユーザーのAIモデルの使い方は、一般的な企業のそれと大きく異なる。つまり、業務の補助的な使い方ではなく、基幹業務の中心にAIモデルを組み込んでいる。通常、AIモデルを利用するには、特別なプログラムを書いたり、複雑なシステムを構築したりする必要がある。しかしメインフレームの場合、たった3行のCOBOLソースコードを書くだけでAIモデルを活用できる。

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