「メインフレーム」は時代遅れ――この誤解が消えることはない理由:メインフレームを正しく評価する【前編】
ワークロード(アプリケーション)を配置するインフラの選択肢として、メインフレームが敬遠されていると筆者は感じることがある。その動きの背景には何があるのか。インフラ選択の“落とし穴”を説明する。
「メインフレームは大企業のコンピューティングの中心的存在であり、これに取って代わるものは存在しない」。メインフレーム関連のコンサルティングを手掛けるMainframe Analyticsのチーフストラテジストで、「メインフレームの伝道師」を自称するレグ・ハルベック氏に筆者がインタビューをした際、同氏はこう切り出した。
複数のコンピュータや拠点でデータを処理する「分散コンピューティング」のバックグラウンドを持つ筆者にとって、ハルベック氏の発言は少々極端過ぎるように思えた。とはいえ筆者は、メインフレーム否定派ではない。基幹システムのインフラとしての要件を満たす、重要な存在の一つがメインフレームだと筆者は捉えている。だがさまざまな組織におけるシステムの現状を見ると、メインフレームがその役割を十分に果たしているとは言えない場合がある。この問題について、何が原因なのかを掘り下げてみた。
「メインフレームが時代遅れ」という誤解はなぜ消えないのか
メインフレームの価値を再考する
調査会社Freeform Dynamicsで筆者と同僚のアナリストであるトニー・ロック氏もインタビューに参加した。ロック氏は中間の立場であり、特にビジネスで重要な業務ではメインフレームが必要だと考えている。
3人全員の意見が一致したのは、さまざまな組織において、ワークロード(アプリケーション)が適切でないインフラに分散して配置されているということだ。具体的に言うと、メインフレームで実行すべきワークロードが、オフィスのサーバルームやパブリッククラウドの「x86」系のサーバで実行されていることがその一例だ。
メインフレームを保有している大企業で、メインフレームの方が適しているワークロードがx86系のサーバに配置されるということは、サービスレベル(インフラの稼働率)の低下やセキュリティ対策の妥協を意味する。
筆者とハルベック氏、ロック氏の3人は、ワークロードのインフラとして、IBMの「IBM Z」をはじめとしたメインフレーム製品が正当な評価を得られていないという点で見解が一致している。
メインフレームは「古くて時代遅れで高価な技術」なのか
それでは、新しいワークロードに対して、メインフレームが想定よりも普及していない理由は何か。メインフレームの専門家やベンダーがしばしば見落している事実として、アプリケーションを開発したりホストしたりするインフラを選択するIT部門の責任者やアーキテクト、プログラムマネジャーなどが、メインフレームに関わる経験を持っていないということが挙げられる。彼らは、
- MicrosoftやVMwareの仮想化製品
- x86系のサーバ製品
- 「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」「Google Cloud」といったクラウドサービス群
などを扱いながら、キャリアを積んできたと考えられる。彼らにとってメインフレームは未知の領域になる。「メインフレームを採用するのはリスクが大きい」と考えられていても不思議ではない。
ハルベック氏はこうした近年の状況についてさらに踏み込んだ発言をする。「『分散コンピューティング』を主流と考えている人々は、メインフレームについて自分が何を知らないのかさえ分かっていない場合がある」
ロック氏は次のように話す。「問題は、メインフレームをインフラとして選択しない人々は、メインフレームを使わない現状に満足しているということだ。結果として、メインフレームへの関心も薄くなる」。ハルベック氏もこれに同意する。「人々は、自分たちが既に知っているインフラを選ぶ方が簡単だと考える傾向にある」
企業がワークロードに適切なインフラを選択し、メインフレームが地位を取り戻すためには何が必要なのか。後編で説明する。
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