現代のAIブームを生んだ「機械学習」の知られざる歴史:AIがよく分かる「機械学習の歴史」【第1回】
近年のAIブームを支える立役者として機械学習の存在があるが、その歴史が広く知られているとは言い難い。年表を用いながら、その進化の軌跡をひも解いていく。
人工知能(AI)ブームの中心にあるのが機械学習だ。「生成AI」のベースとなる大規模言語モデル(LLM)も、膨大な量のデータを分析して単語やフレーズのパターンを特定する機械学習モデルの一種だ。機械学習は20世紀半ばに誕生して以来、数々の進化を遂げてきたが、その歩みは広く知られているわけではない。本稿は、機械学習の発展を年代ごとに振り返りながら解説する。
AIブームを生んだ「機械学習の進化」の歴史
機械学習とは、データを基に学習し、その知識を何らかのタスクに適応できるようにする手法を指す。機械学習は、データのパターンを分析して予測結果を生成するために、アルゴリズムと統計モデルを用いる。
例えば機械学習は、
- ショート動画共有サービス「Instagram」の投稿分析
- 病院におけるX線写真の解析
- 事故のリスク予測
- サイバー攻撃の防御
など、さまざまな場面で活躍しており、eコマース(EC:電子商取引)、製造、金融、保険、医療など、幅広い業界の仕事にとって欠かせない存在になっている。
1943年、神経科学者のウォルター・ピッツ氏とウォーレン・マカロック氏がニューラルネットワークの数理モデリングを考案し、機械学習の概念が誕生する。それから現代に至るまで、機械学習は多種多様な進化を遂げてきた。
1950年代
AIや機械学習という用語が生まれ、以下のような機械学習のパイオニアたちが名を残した。
- アラン・チューリング氏
- アーサー・サミュエル氏
- ジョン・マッカーシー氏
- マービン・ミンスキー氏
- ディーン・エドモンズ氏
- アレン・ニューウェル氏
同時期に、世界初と考えられている人工ニューラルネットワーク「チューリングテスト」が考案された。これは、プログラムが「知的であるかどうか」を判別するテストのことだ。
1960年代
チャットbotの元祖である「ELIZA」や、自動運転の礎になったコンピュータ制御の月面調査用車両「Stanford Cart」、移動能力を持つ汎用(はんよう)ロボット「Shakey the robot」が誕生し、深層学習の基礎が構築された。
1970年代から1980年代
以下のような技術やプログラムが開発された。
- パターン認識
- 手書き文字認識
- 自然選択説に基づいて問題を解決するプログラム
- 適切な行動を求めるプログラム
- 重要ではない情報を処分する規則を作るプログラム
- 単語の発音を学習するプログラム
1990年代
IBMが「TD-Gammon」を開発した。これはチェスやボードゲーム「Backgammon」をプレイできるプログラムで、強化学習により最適な手法を導き出すことができた。当時の世界チャンピオンや上級プレイヤーの座を脅かした。
2000年代
2011年、IBMのスーパーコンピュータ「IBM Watson」が、米国の人気クイズ番組「Jeopardy!」でクイズ王を打ち負かした。2000年以降、以下の技術が一般で利用されるようになった。
- パーソナルアシスタント
- 敵対的生成ネットワーク(GAN:Generative Adversarial Network)
- 顔認識
- ディープフェイク
- モーションセンサー
- 自動運転
- マルチモーダルLLM
- AIツールの民主化によるコンテンツと画像の作成
次回は、機械学習の黎明期について解説する。
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