検索
特集/連載

老舗眼鏡チェーンがOracleとの保守契約を止めた理由ERPの保守をサードパーティーに移行する

眼鏡小売店のSpecsaversはIT管理コスト削減のためにOracleのERP製品の保守契約を終了し、サードパーティーのサポートサービスに移行した。Oracleの保守契約を止めることで、どのような影響や効果があったのか。

Share
Tweet
LINE
Hatena

関連キーワード

Oracle(オラクル) | ERP


 英国で眼鏡の小売りを手掛けるSpecsaversは、サプライチェーンシステムとしてOracle製品を利用している。同社は調査会社Gartnerが2024年11月に開催したカンファレンス「Gartner IT Symposium/Xpo」で、小売業者のサードパーティーのIT管理サービスが資金調達にどのように役立っているかを話し合うセッションに登壇した。

 Specsaversの使命は、より良い視覚と聴覚を通じて人々の生活を変えることだ。Specsaversの技術部門の責任者を務めるキアラン・マズール氏は「この哲学はIT機能の全てに根付いている」と話す。40年以上にわたる事業の中で、同社は眼科医を通して膨大な臨床データを収集している。マズール氏は、同社がこのデータをどのように活用できるかを模索している最中だと話す。こうしたデータを予測分析に利用することで、経験の浅い店員が患者データをより正確に理解し、顧客に最良のアドバイスを提供できるようになるのではないかと同氏は見ている。

Specsaversが“脱Oracle”した理由

 2021年にSpecsaversはITコンサルティング企業Accentureと契約を締結。Microsoftと協力して、自社のレガシーなシステムのモダナイゼーションに取り組み始めた。この契約は、クラウドコンピューティングや人工知能(AI)技術を用いて業務を自動化する「インテリジェントオートメーション」、最新のセキュリティ技術などの活用を通して社内システムを一元化し、インシデントを減少させ、システムの総所有コスト(TCO)を削減することを目的としている。

 Specsaversは2010年からOracle製のERP製品を運用している。マズール氏によると、Oracleのシステムは同社に根付いており、Accentureは新しい技術の採用に意欲的だったという。一方でOracleの対応からは、「長期的な顧客であり、40年の歴史を持つグローバル企業であるSpecsaversがOracleにとって重要な存在であると感じられなかった」(マズール氏)

Oracleとサードパーティーベンダーの保守サービスの違いとは

 2024年初頭、Specsaversは大手ITベンダー製品の導入・運用を支援するSpinnaker Support(以下、Spinnaker)と契約を結んだ。Oracleのシステムの保守を引き継いでもらうためだ。OracleからSpinnaker Supportに移行した理由を、マズール氏は次のように語る。「Oracleの保守契約から価値を得られなかったからSpinnakerを選んだ。システムの保守コストを抑え、節約した資金をシステムのモダナイゼーションに振り分けることにした」

 マズール氏によれば、Oracleが提供するサポートの場合は、ユーザーが自分で問題を診断し、解決策を見つけるためのパッチやドキュメントにアクセスすることが必要だ。一方Spinnakerは、「Specsaversのシステムや要求を理解しており、問題が発生したときにその背景を詳しく説明する必要がない」という。

 マズール氏はSpinnakerとOracleの契約を並行して運用することで、段階的な移行を開始した。その際同氏は、Spinnaker Supportのサービスを利用することはOracleとの長期的な関係に影響を与えないと社内の人々を説得した。

 この時点で提供されていた全てのOracleのパッチをダウンロードした後、SpecsaversはOracleのサポートサービスをSpinnaker Supportのサポートサービスと比較した。「パッチを適用すれば解決できる問題は、Spinnaker Supportの方が迅速に問題解決できるようになることを確認した」とマズール氏は話す。

 SpecsaversはOracleの永続的なソフトウェアライセンスを保持している。そのため同社は保守体制を変えた後もオンプレミスでOracleシステムを運用し続けている。マズール氏は次のように説明する。「当社はソフトウェアを使用する権利を引き続き保持している。しかしOracleが今後提供するパッチや新機能が利用できなくなった」

 パッチを利用できなくなっても問題はないとマズール氏は予想している。「SpecsaversはERPの基盤となる技術のアップグレードを完了し、既に十分な機能を持っていると確信しているからだ」(マズール氏)

 マズール氏によれば、Specsaversは今後ERP製品のアップデートをする権利は失った。しかし同氏は「古いオンプレミス製品に大きな動きがあるとは期待していない」と指摘する。Oracleは企業向けソフトウェアのクラウドサービスを提供しており、既存のオンプレミス製品の顧客を同サービスに移行させることに注力しているためだ。

 完全にSpinnakerに移行した後は、それ以降にOracleが提供するパッチは利用できなくなる。しかしシステムの成熟度と現在アクセスできるパッチを考慮すると、Spinnakerとともに将来起こり得る問題を解決できると、マズール氏は説明する。

 サードパーティーベンダーに移行するという選択肢は、ITコストを削減する方法の一つだ。だがマズール氏は次のように話す。「事業を推進させるためのIT予算は削減すべきではない。SpecsaversのIT部門は、Oracleからの移行で獲得した予算を使って、成長する方法を模索している」

 Oracleが提供する業務アプリケーションが、直接顧客に大きな影響をもたらすわけではない。マズール氏は「Oracleの保守を止めて節約した資金は、オンラインショッピングや実店舗の消費者体験に再投資する」と説明する。

TechTarget.AIとは

TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

ページトップに戻る