これからの「AI市場」をけん引する“14の技術”はこれだ:AIがよく分かる「機械学習の歴史」【第6回】
調査会社によると、AI市場は今後さらに成長を続けることが見込まれる。これからのAI市場をけん引するのはどのような技術なのか。
人工知能(AI)ブームは一時と比べて落ち着きを見せつつあるものの、技術的進化を続けており、今後も社会に大きな影響を及ぼすと考えられる。本稿は、調査会社の考察を基にAI市場の今後を探る。加えて、これから重要となるAI関連の技術や、それらがどのように社会やビジネスに変革をもたらすのかを解説する。
これからの「AI市場」をけん引する技術とは
併せて読みたいお薦め記事
連載:AIがよく分かる「機械学習の歴史」
- 第1回:現代のAIブームを生んだ「機械学習」の知られざる歴史
- 第2回:「機械学習」「人工知能」はこうして生まれた――AIの原点を探る
- 第3回:「機械学習」「人工知能」はこうして生まれた――AIの原点を探る
- 第4回:「身近なAI」の基礎を築いた転換期 2024年ノーベル賞受賞者も発展に一翼
- 第5回:「Chat GPT」登場までに何が起きた? 激動のAI史をおさらい
AI活用の気になるポイント
賢く使いやすいAIチャットbotが普及することで、誰でも簡単に文章や画像、動画、音声、ソースコードを作成できるようになった。本来なら数時間、時には数日かかる作業を、一瞬でこなせるようになった。
機械学習は今後、自動運転システム、セキュリティ、ゲームなど、幅広い領域に浸透すると見込まれる。調査会社MarketsandMarkets Researchによると、AI市場は年平均35%の成長を記録しており、2030年までにその市場規模は1兆3000ドルを超えるという。将来的には汎用(はんよう)人工知能(AGI)の実現を視野に、データサイエンティストや機械学習分野の専門家の需要はさらに高まると見込まれる。
調査会社Gartnerの予測では、業務アプリケーションへの対話型AIの組み込みが進み、AIモデルが自動でアプリケーションを開発する時代が到来する。その結果、ビジネスモデルや働き方は急激に変わる可能性がある。
AIの民主化が進み、AIモデルが洗練される中で、今後の進化に期待が寄せられている技術には以下のようなものがある。
- マルチモダールAI
- テキストだけでなく、数値や画像、音声など複数種類のデータを組み合わせて、あるいは関連付けて処理できる技術。人間のジェスチャーや感情などを汲み取ることもできるようになる。
- ディープラーニング(深層学習)
- 写真やテキスト、音声などのデータにおけるパターンを認識し、従来人間の知能が必要とされてきたタスクを自動化する。複雑な問題をより効率的かつ正確に解決できるようになる。
- 大規模アクションモデル(LAM:Large Action Model)
- 複数種類のデータや人間の意図を理解し、業務を最初から最後まで自動で遂行できるモデル。
- AutoML(自動機械学習)
- 機械学習における一部プロセスを自動化する。AIモデルをより迅速に構築できるようになる。
- TinyML(埋め込み型機械学習)
- コンピュータ端末やセンサーなどのエッジデバイスを用いて、データをリアルタイムで効率的に処理する。
- MLOps
- 機械学習(ML:Machine Learning)と運用(Ops:Operations)とを組み合わせた手法。機械学習システムの開発、トレーニング、運用を効率化する。
- ローコード/ノーコード
- 最低限のソースコードを記述する「ローコード開発」、ソースコードを記述しない「ノーコード開発」ツールが登場することで、プログラミングの専門知識を持たない人でも、AIモデルの開発や実装ができるようになる。
- 教師なし学習
- 例題とその答えを組み合わせた「教師データ」を利用しない機械学習の手法で、出力すべき結果が定まっていないことが特徴。人間が介入することなく、データラベリングや機能設計ができる。
- 強化学習
- アルゴリズムが取った行動に応じて報酬もしくはペナルティーを与えて学習させる方法。繰り返し実施することで、AIモデルの回答精度を微調整することが可能。
- 自然言語処理(NLP)
- 自然言語をコンピュータが処理できる形式に変換する技術。コンピュータはNLPによって、自然言語のテキストや話し言葉を解析して処理できるようになる。
- 顧客向けアプリケーションなどに組み込むことで、より流ちょうな対話型AI機能を提供できる。
- コンピュータビジョン
- 画像処理を通じて対象の内容を認識し、理解するAI技術。医療診断の効率化や、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)の機能向上に役立つ。
- デジタルツイン
- 現実の物体や物理現象をデータで再現したもの。スマートシティー(環境配慮型都市)から人体に至るまで、各領域のシミュレーションや分析が可能になる。
- ニューロモルフィックコンピューティング
- 人間の脳の構造を模す技術。コンピュータプログラムが同時に複数の処理を担えるようになる。
- ブレインマシンインタフェース(BMI)
- 脳と機械を直接接続し、思考や意図に基づく情報の伝達や操作を可能にする技術。筋萎縮性側索硬化症、脳性小児まひ、脳卒中、脊髄損傷といった、神経筋疾患を患った人が、身体機能を回復できるようにする。
これらの技術進化が、人々の暮らしを豊かにする可能性がある一方、ビジネスでAI技術を活用する際は、バイアス(偏見)やプライバシーに関するリスクに対処し、AIモデルの信頼性、透明性、説明責任、倫理性を確保することが重要となる。
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