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“環境にやさしい商品”は本当に売れるのか 消費者の本音は?過大な宣伝をする企業も

「環境にやさしい」「サステナブル」といった言葉を掲げる商品が広がる中、一部の企業はその内容を過大に宣伝する「グリーンウォッシング」をしている。消費者はこうした動きをどう見ているのか。

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マーケティング| 環境保護


 気候変動をはじめとした環境問題への関心の高まりから、サステナビリティー(持続可能性)や「ESG」(環境、社会、ガバナンス)を掲げる企業の取り組みや商品が広まっている。一部の企業は消費者から注目を集めたいがために、環境への配慮を過大に宣伝する「グリーンウォッシング」もしている。消費者はこうした“環境にやさしい商品”をどのように見ているのか。

消費者は“環境にやさしい商品”をどう見ている?

 消費者は、企業が発信する「サステナブル」「環境にやさしい」といったメッセージの根拠を求めている――米国の小売業界団体National Retail Federation(NRF)でバイスプレジデントを務めるスコット・ケース氏はこのように述べる。同氏によると、企業が発信するメッセージがグリーンウォッシングを感じさせる場合、消費者はその商品を手に取らない傾向がある。

 グリーンウォッシングの定義は企業や消費者によって異なる。ケース氏は「それぞれの消費者がグリーンウォッシングに対して独自の考えを持っている」と述べる。

 企業が商品の持続可能性について正確な情報を提供したとしても、消費者にとってはその内容が十分ではない場合もあるとケース氏は指摘する。例えば、ある企業が自社の商品をカーボンクレジットやカーボンオフセット(温室効果ガスの削減や排出量に関する取り組み)の観点から持続可能性があると宣伝する。しかし一部の消費者は、他の企業と比べて取り組みが不十分だと捉えたり、宣伝にすぎないとみなしたりする場合がある。

 別の例を挙げると、衣料品にリサイクル素材を使用して持続可能性を主張する一方、低価格の衣料品を大量に生産するアパレルメーカーがある。一方、廃棄予定の衣料品を再利用し、少量の衣料品を生産して、製造業者に適切な賃金を支払うメーカーもある。両者を比べると、消費者の捉え方は異なる。

 企業のあらゆる発信内容に疑いを持つ消費者もいると、市場調査会社Forrester Researchでバイスプレジデントを務めるトーマス・ヒュソン氏は述べる。そのような消費者は、特定の研究者や研究機関、非営利団体の発信を信頼し、利益を優先する企業の発信には懐疑的だという。企業のマーケティング部門の責任者の中には、グリーンウォッシングと非難されることを恐れ、情報の発信をためらう人もいる。

 このような消費者の反応に対し、企業は持続可能性への取り組みを明らかにするべきだとヒュソン氏は提言する。企業は自社の活動や提供する製品、顧客や従業員で構成するコミュニティーを通じて、持続可能性のメッセージを発信し、消費者の理解を得る。こうした取り組みは簡単ではないが、「グリーンウォッシングを避けるための最良の方法だ」とヒュソン氏は述べる。

「サステナビリティー」で商品は売れる?

 環境問題や社会問題に対する消費者の意識が高まるにつれ、商品の値段や生産コストは何にひも付いているのかという問題意識が消費者の中で高まりつつある。

 調査会社McKinsey & Companyとマーケティングリサーチ会社Nielsen Consumer傘下のリサーチ会社NielsenIQは2023年7月、調査レポート「Consumers care about sustainability and back it up with their wallets」を公開した。それによると、ESGをアピールに使った商品の累計売上高は、2017年から2022年にかけて28%増えた。同じ期間中、そのようなアピールをしていない商品の累計売上高は20%増だった。調査レポートは2017年〜2022年、米国で販売された食品や飲料など32種類の売り上げを分析した結果に基づいている。

 IBMのシンクタンクIBM Institute for Business Value(IBV)とNRFが2022年に発表した調査レポート「Consumers want it all: Hybrid shopping, sustainability, and purpose-driven brands」も、以下のように商品の価格と持続可能性の関係性を明らかにした。調査は2021年、28カ国の消費者1万9000人を対象に実施した。

  • 62%が「環境への影響を考慮して購買行動を変更することに前向き」と回答
  • 31%が「直近に購入した商品は持続可能性や環境に配慮したものだった」と回答
  • 35%が「持続可能な製品とそうでない製品が同等の価格であれば、持続可能な製品をより多く購入する」と回答
  • 50%が「持続可能な製品に対して代金をより多く支払う」と回答

 企業はこうした消費者の関心を商品の購買につなげることが有用だ。例えば「ネット通販の配送方法で即日配送を選ばなければ、二酸化炭素排出量を削減できる」といった情報を伝えれば、消費者は持続可能な選択肢があることに気付くことができる。顧客は持続可能な選択肢が存在すること自体に気づいていない可能性があるため、このようなコミュニケーションは重要だ。同時に、企業は従業員に対してESGや持続可能性に関する研修を提供する必要性もある。

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