「コード生成AI」は“もろ刃の剣” 開発者はどう使いこなすべきなのか?:AI時代の開発に必要な視点
AIツールの登場により、開発者の生産性は飛躍的に向上している。一方で、その活用方法を誤ると、逆に悪影響を及ぼすリスクも無視できない。
ソフトウェア開発における人工知能(AI)技術の活用は急速に進んでおり、AIツールは開発者にとって欠かせない存在になりつつある。一方で、その使い方次第では開発者のスキル低下や、最終的な開発品質への悪影響を招く可能性もある。
実際、AIツールは開発現場でどう使われているのか。オープンソースソフトウェア(OSS)の開発支援ツール「GitLab」を提供するGitLab社が2024年10月に開催したイベントで、開発にAIツールを活用する複数の企業がその取り組みを紹介した。
「コード生成AI」は“もろ刃の剣” 使いこなすためのポイントとは
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効率的なキャリアアップを実現
FinTech(金融とITの融合)企業Atom Bankのエンジニアリング責任者サイモン・ドーソン氏は、AIツールを活用した開発者のスキルアップやトレーニングについて語った。「多くの企業は即戦力となるシニアレベルの開発者を採用したいと考えるが、当社はAIツールを用いて初級レベルの開発者を効率的に育成し、より早くシニアレベルに到達できるよう目指している」とドーソン氏は説明する。
一方でドーソン氏は、「AIツールに依存することで、人間のスキルが低下してしまうリスクがある」と警鐘を鳴らす。AIツールを使うことで人間の学習機会が減り、キャリアアップに必要な知識やスキルの習得が妨げられてしまうリスクに注意すべきだ。
開発者の現場復帰にも貢献
通信事業社Community Fibreでエンタープライズアーキテクトを務めるキショール・トシュニワル氏は、AIコーディングツールの助けを借りてソフトウェアを開発した経験について語った。
開発したソフトウェアは、Community Fibreが設置する通信機器の管理を効率化するもので、モバイル端末のカメラによるスキャン機能を搭載する。当初、トシュニワル氏はスキャン機能をどう実装すればよいのか全く知識がなかった。AIコーディングツールを活用することで必要なソースコードを特定し、自社環境に組み込むことができたという。
10年以上ソースコードを書いていなかったというトシュニワル氏だが、「自分が書いたソースコードが実際に稼働する場面を目の当たりにし、大きな達成感が得られた」と語る。それ以降、勤務時間の25%をソフトウェア開発に充てているという。
トシュニワル氏のように、AIツールの登場をきっかけに再びコーディングに取り組み始める人もいるだろう。長年のブランクがあっても、AIコーディングツールで忘れた知識を補うことができる。
導入効果をどう評価すべきか
AIツールを使用する際の課題の一つに、「導入効果の測定」がある。このプロセスは時に主観が入りやすく、定量的な評価基準を設定するのが難しい。
GitLabのCPO(プロダクト最高責任者)デイビッド・デサント氏は、「『生成したソースコードの行数』といった見た目の指標にとらわれてはいけない」と強調する。例えば、短く効率的に書かれたソースコードは動作が速くバグも少ない傾向にある。反対に、行数が多いソースコードは複雑化しやすく保守性が低下する他、バグの温床になりやすい。つまり、「どのように効率化に貢献し、開発品質の向上に貢献したか」を評価する視点が求められる。
Atom Bankは、GoogleのAIアシスタント「Gemini」に会議の議事録作成や要約を任せることで、従業員の会議に対する集中度を高めることができたという。ドーソン氏はこの経験を踏まえて、「AIツールの導入前に現在の業務プロセスを把握した上で、AI導入で達成したい成果を明確化すべきだ」とアドバイスする。
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