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「Intelの大負け」が“もう当然だった”としか言えない訳Intel衰退への道のり【中編】

コンピューティング市場で支配的な地位にあったはずのIntelは、なぜここまで衰退してしまったのか。同社の失敗が決定的になった要因とは何か。

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Intel(インテル) | AMD | CPU | x86


 コンピュータ業界をけん引していたはずのIntelは、いまや半導体で同業のNVIDIAやAdvanced Micro Devices(AMD)に大きく水をあけられている。なぜIntelはここまで衰退してしまったのか。同社の歴史を振り返ると、失速した明確な原因があったことが分かる。

なぜ「Intelの大負け」は“もう当然”だったのか

 Intelは2007年にAppleからスマートフォン「iPhone」向けのCPU供給を求められたが、それを断り、結果的にモバイル分野ではArmが支配力を強めるに至った。これはIntelの衰退が始まった一因として挙げることができるが、他にも大きな要因がある。

 競争力のあるGPU(グラフィックス処理装置)製品の開発とAI(人工知能)分野への参入をうまく成し遂げられなかったことだ。GPUはいまや、生成AIのインフラとなるAIアクセラレーター(AI処理を高速化するためのプロセッサ)に欠かせない存在になっている。

 GPUの黎明(れいめい)期である1990年代後半、市場を先導したのはNVIDIAと、2006年にAMDが買収したATI Technologiesだった。Intelは「Intel 740」(i740)など、独自のGPU技術で勝負に出たこともあるが失敗に終わっている。代わりに同社は自社プロセッサ向けの統合グラフィック機能の開発に力を入れたものの、GPUを頼りにするゲーム愛好家の関心はほとんど得られなかった。

 2019年、IntelはAIアクセラレーター市場への参入をもくろみ、AI向けの半導体を手掛けるHabana Labsを20億ドルで買収した。その技術がIntelのAIアクセラレーター「Gaudi」シリーズに使われているが、市場ではNVIDIAのGPUに後れを取っている。例えば、2024年4月発表の「Gaudi 3」について、Intelは2024年11月の収支報告において、「Gaudiは収益目標を達成できない見込み」であることを認めている。

他の失敗と逃したチャンス

 Intelの衰退を招いた失敗、チャンスの逸失は他にもある。

Itanium

 「Itanium」は2001年にリリースされたプロセッサファミリーで、IntelとHPのパートナーシップにより、RISCアーキテクチャの一つとしてHPが開発した「PA-RISC」の派生物として開発された。当初の目的は、Intelがサーバ市場で優位に立つための新たなサーバアーキテクチャを構築することだった。だがこのプロセッサはIntelが開発したアーキテクチャ「x86」との適切な互換性がなく、最終的にはAMDが開発元したx86-64アーキテクチャ(x86をベースにしつつ64bitに対応)に敗北することとなった。Intelが最後のItaniumプロセッサをリリースしたのは2017年だった。

買収の失敗

 Intelは買収戦略でも判断ミスを重ね、高い代償を払っている。2010年、セキュリティベンダーMcAfeeを約77億ドルで買収したものの、企業全体に利益をもたらすような形でビジネスを統合することができず、McAfeeは2016年に分社されている。

 2017年には約150億ドルのMobileye買収もあったが、Intelは自動車分野の技術を自社のコア技術群において十分に利用できず、2022年にMobileyeは別の独立企業として上場している。

品質管理

 Intelの苦戦は製品開発と品質管理にも及ぶ。2024年、同社は第13世代「Core」プロセッサシリーズの開発コードネーム「Raptor Lake」の不安定性の問題で、複数回の集団訴訟を受けている。

OpenAI

 2017年、IntelはOpenAIへの投資を持ち掛けられたもののこれを断り、特に大きなチャンスを失ったと言える。この取引では、OpenAIにIntelのハードウェアを使用することが要求された。


 次回は、Intelの生き残りとトップへの返り咲きの可能性を考える。

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