学校から個人情報が流出 「PowerSchool侵害」による影響は?:教育機関向けシステムに不正アクセス【後編】
ソフトウェアベンダーPowerSchoolへの攻撃によって、全米の教育機関で生徒と職員の個人情報が漏えいした。流出したのはどのようなデータなのか。攻撃の全貌に迫る。
2024年12月、教育機関向けソフトウェアを手掛けるPowerSchoolが攻撃を受けた。この攻撃により、同社ソフトウェアを利用している教育機関の生徒と職員の個人情報が流出したという。どのような情報が流出し、被害者はどのようなリスクにさらされているのか。日本の教育機関にとっても対岸の火事ではないこの攻撃。その詳細を解説する。
流出したデータ、攻撃の影響は?
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組織にとってのデータ流出リスク
PowerSchoolによると今回の攻撃は、生徒と職員の情報が保存されている同社のデータベースを使用している教育機関に影響を与えた。正確な数は不明だが、米国でPowerSchoolのソフトウェアが広く採用されていることを考えると、情報漏えいの規模は決して小さくはない。
PowerSchoolによると、今回の攻撃によって以下の個人情報が流出した。
- 生徒と家族
- 攻撃されたシステムに情報が保存されていた生徒
- 上記にひも付いて関連情報が保存されていた家族
- 職員
- 攻撃されたシステムに情報が保存されていた学校職員
- 影響を受けた学区で、記録に個人情報が含まれていた職員
一部の学区では過去のデータも流出したと報告されている。そのため、現役ではない生徒と職員も影響を受けている。
どのようなデータが盗まれたのか
PowerSchoolによれば、盗まれた生徒と職員の個人情報には以下が含まれているという。銀行口座の情報やクレジットカード情報が漏えいした証拠は見つかっていない。
- 氏名
- 住所
- 生年月日
- ソーシャルセキュリティナンバー(SSN)
- 医療情報
- 学業成績
攻撃の時系列
攻撃に関する詳細はまだ公開されていないが、本稿執筆時点での開示情報を踏まえて攻撃の時系列を整理すると以下の通りだ(全て米国時間)。
- 2024年12月19〜23日
- PowerSchoolのシステムに不正アクセス
- 2024年12月28日
- PowerSchoolが攻撃を発見
- 2025年1月7日
- PowerSchoolが影響を受けた教育機関にデータ漏えいの可能性について通知
- 2025年1月8日
- 一部の教育機関が情報漏えいについて職員と保護者への通知を開始
- 2025年1月13日
- PowerSchoolのWebサイトで攻撃を公開
攻撃を仕掛けたのは誰か
攻撃を誰が実施したのかを含めて、攻撃の全容は本稿執筆時点で調査中だ。PowerSchoolは米連邦捜査局(FBI)やセキュリティベンダーCrowdStrikeと協力して攻撃の詳細を把握することに注力しているという。
攻撃の影響
PowerSchoolのデータ流出は生徒と職員を中心とした教育機関の関係者に広く影響を及ぼしている。具体的な影響は以下の通りだ。
- 詐欺のリスク
- 影響を受けた人は、個人情報を悪用した詐欺のリスクにさらされている。個人情報は長期にわたって悪用される可能性がある。
- コストの発生
- 被害を受けた教育機関は再発防止のためにセキュリティを強化する必要があるので、コストが発生する。
- 法的なリスク
- PowerSchoolや、場合によっては教育機関に対して訴訟が起こされる可能性がある。
- 業務負荷の増加
- 被害を受けた教育機関は新しいセキュリティ対策を実施したり、データ管理の方法を見直したりする必要があり、業務負荷が増える。
攻撃によって教育機関が被害を受けるのは、PowerSchoolの件に限らない。近年、教育機関を直接狙ったランサムウェア(身代金要求型マルウェア)攻撃も広がっている。2024年は米国やカナダにおいて、教育機関を標的にした数件のランサムウェア攻撃があった。教育機関はセキュリティを強化するとともに、攻撃を受けた際に被害を最小限に抑えるレジリエンス(回復力)を高めるための施策も重視する必要がある。
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