「AIエージェント」があっても「RPA」がオワコンではない理由:AI時代の自動化を考察する【中編】
RPAとAIエージェントはどちらも業務自動化に役立つ技術だが、それぞれ得意分野と限界がある。業務の特性に応じたRPAとAIエージェントの使い分け方を整理する。
2024年末から特に関心を集めるようになった「AIエージェント」(AI:人工知能)は、「RPA」(ロボティックプロセスオートメーション)が抱えていた課題を克服する技術として注目されている。とはいえ、AIエージェントはRPAを完全に代替するものではなく、両者にはそれぞれ適した活用領域がある。本稿は、業務の性質に応じたRPAとAIエージェントの使い分けについて整理し、効果的に活用するためのヒントを探る。
「AIエージェント」が「RPA」を代替するわけではない?
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RPAは“オワコン”なのか?
RPAは、あらかじめ定義されたルールに基づいて特定のタスクを自動化する、実績のある技術だ。構造化データや定型的なワークフローの処理に強みを持つが、適用できる範囲には限界がある。
対するAIエージェントは、大規模言語モデル(LLM)と外部ツールが連携してタスクを遂行する、比較的新しい自動化アプローチだ。非構造化データを扱うことができ、状況に応じた判断や柔軟な対処が求められるタスクにも適する点が特徴だ。汎用(はんよう)性ではRPAを上回るものの、まだ発展途上の技術であり、エラーや想定外の動作が発生するリスクが伴う。
RPAとAIエージェントのどちらか一方を選ぶのではなく、両者を補完的に組み合わせて使うアプローチも有効だ。RPAがレガシーシステムとのデータ連携を担い、その出力を基にAIエージェントが高度な判断や自然言語処理を担うといった使い方が考えられる。こうした役割分担によって、自動化の適用範囲をさらに広げることができる。
RPAとAIエージェントの使い分け
業務プロセスに以下の特徴がある場合には、RPAの活用が有効だ。
- 反復的
- ルールに適用可能
- 入力データが構造化されている
- 意思決定を必要としない
以下のような定型業務がRPAの代表的な適用例だ。
- システムへのログインやアプリケーション間のデータ転送
- メールからの構造化データの抽出と、データベースへの入力
- 請求書のような定型フォーマットの文書処理
- API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を使用しないレガシーシステムにおけるレコード更新
一方、非構造化データの処理、継続的な学習や調整、状況に応じた判断が求められるタスクでは、AIエージェントの活用が効果的だ。例えば、以下のような事例に適している。
- ソーシャルメディアにおける投稿の感情分析
- スクリプトに依存しない動的な顧客対応
- 自然で人間らしい文章の生成
- 非構造化データの要約とインサイト(洞察)の抽出
業務の中に構造化データと非構造化データの両方が含まれる場合や、業務をRPAとAIエージェントで分担させたい場合は、両者の併用を検討すべきだ。例えば以下のような活用例が考えられる。
- データ抽出
- 構造化された文書はRPAが処理し、非構造化データはAIエージェントが処理する
- メールの自動返信
- 定型的な返信はRPAが、内容に応じて必要な調整はAIエージェントが担当する
- カスタマーサポート
- RPAはデータ入力を、AIエージェントは顧客情報に基づく判断や応答を担当する
- インテリジェントなドキュメント処理
- RPAがデータを抽出し、AIエージェントがその内容を解釈および分析する
- ITサポートの自動化
- パスワードリセットなどの定型タスクはRPAが、より複雑な障害対応はAIエージェントが担当する
- 保険金の請求処理
- 定型フローはRPAが管理し、複雑なドキュメントの解釈や判定はAIエージェントが担当する
後編は、RPAとAIエージェントどちらを採用すべきか検討する際に見るべきポイントを解説する。
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