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「スーパーコンピュータ」と「量子コンピュータ」でできる“問題解決”の違い:高性能なコンピューティングの現状と未来【中編】
いずれスーパーコンピュータの計算能力を大幅に上回る可能性を秘める量子コンピュータ。両者は何が違うのか。用途の観点から解説する。
「スーパーコンピュータ」も「量子コンピュータ」も、一般的な汎用(はんよう)のコンピュータでは担えない膨大な計算処理を必要とする問題を解決できる。量子コンピュータは将来的にはスーパーコンピュータの計算能力を大きく上回る可能性を秘めている。両者によって解決可能な問題にはどのような違いがあるのか。用途の観点から比較する。
「スーパーコンピュータ」と「量子コンピュータ」で解決できる問題
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連載:高性能なコンピューティングの現状と未来
量子コンピュータの動向を追う
スーパーコンピュータの主な用途
スーパーコンピュータは計算科学の分野で重要な役割を果たしている。次のようなさまざまな分野において、集中的な計算を必要とする幅広いタスクに使われている。
- 気象予測
- アメリカ大気研究センター(NCAR:National Center for Atmospheric Research)のスーパーコンピュータ「Derecho」では、太陽光を遮るエアロゾルを成層圏に放出すると、雷雨や降雨のパターンにどのような影響が出るのかを分析している。
- 宇宙探査
- アメリカ航空宇宙局(NASA:National Aeronautics and Space Administration) は、スーパーコンピュータ「Aitken」を使用して、人間が月に長期滞在するためのモデルのシミュレーションを実施している。
- 分子モデリング
- 2022年、スタンフォード大学の(Stanford University)の研究者がスーパーコンピュータを使用して、以前は13年を要していたゲノム解読プロセスをわずか5時間強に短縮した。
- 物理シミュレーション
- スーパーコンピュータでは、宇宙の黎明期、航空機や宇宙船の空気力学、核融合などについてのシミュレーションが実行されている。航空産業では、GE Aerospaceが二酸化炭素排出量を20%以上削減できるかどうかをテストしている。
高速並列計算、総当たり攻撃、複雑な暗号アルゴリズムの解析によって暗号を解読する暗号解析にも、スーパーコンピュータが欠かせない。
量子コンピュータの主な用途
量子コンピューティングは、次の分野における難題に対処するために使われる。
- サイバーセキュリティ
- 量子暗号は量子力学を利用してデータを保護し、転送することでデータをハッキング不能にする。量子暗号では、光子と呼ばれる非常に小さな粒子に情報がエンコード(符号化)される。データが傍受されると光子の量子状態が変化するため、ハッキングを検出できる。
- 新しい薬物治療
- 量子コンピュータは膨大な量のデータの処理に優れているため、医薬品研究では量子処理が非常に有効に働く。例えば、生体機能を再現するデバイス研究開発をするAlveoliXの科学者は、量子コンピューティングを使って遺伝子データやゲノムデータの処理の高速化を可能にし、副作用の防止、複雑さの軽減、動物実験の必要性の最小化に役立てている。
- 物流業務の改善
- 量子コンピューティングは複雑な最適化問題をより迅速かつ正確に解決することで、物流業務やエネルギー効率を改善できる可能性がある。例えば、量子アルゴリズムはロサンゼルス港で貨物を移動する際の速度や処理量を向上するのに役立っており、同港がリスクを下げながらより効率的に業務を実施できるようにしている。
- 予測の高速化と正確性向上
- 量子コンピューティングは、従来型コンピュータには担い切れない計算能力を必要とするシミュレーションを実行できる。例えば、スペインのスタートアップMultiverse Computingは、自動車部品メーカーBoschと共同で、サプライチェーンの障害を予測し、メンテナンスのスケジュールをリアルタイムで最適化している。
- 機械学習
- 人工知能(AI)技術と量子コンピューティングを融合したソフトウェアを開発するMultiverse Computingによると、量子コンピューティングを利用することで機械学習のアルゴリズムが25分の1の電力で実行できる可能性があるという。
量子コンピューティングは、複雑な問題をより効率的かつ正確に解決することに役立つ。気候モデリングや金融最適化、材料科学などの分野に、いつの日か大革命をもたらす可能性がある。
次回は、スーパーコンピュータと量子コンピュータの課題の観点から両者を比較する。
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