「従来型ネットワーク」の限界が来ている6つの理由 Ciscoが調査:AI時代に求められるネットワーク変革
Cisco Systemsの最新調査により、企業ネットワークのモダナイゼーションが待ったなしの状況にあることが浮き彫りになった。なぜモダナイゼーションに取り組むべきなのか、レポートの内容を解説する。
ネットワーク機器ベンダーCisco Systemsは、企業ネットワークのトレンドに関するグローバル調査を実施し、2025年6月4日(現地時間)にそのレポートを公開した。人工知能(AI)アシスタント、AIエージェント、データ駆動型ワークロード(処理やタスク)といった最新技術がビジネスを変革するにつれ、従来型のネットワークでは対応し切れないケースが増え、ネットワークのアーキテクチャに変化が求められているという。同レポートから、企業ネットワークに起きている6つの変化をまとめた。
ネットワークの変革が求められる6つの理由とは?
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企業ネットワークのトレンド
このグローバル調査は、2024年12月に、Cisco Systemsから委託を受けた調査会社Sandpiperが実施した。30業界の従業員250人以上の組織の、ネットワークやインフラ戦略を担当するITリーダー8065人が調査対象となった。レポートが指摘した6つのトレンドを以下に挙げる。
ネットワークの戦略的価値が向上
企業にとって、ネットワークの戦略的重要性が高まっている。調査対象者の97%が企業ネットワークのモダナイゼーション(最新化)が不可欠であると回答し、91%がネットワークへの投資予算を増額予定と回答した。ネットワークはこれまでもさまざまな情報技術を支える基盤だったが、AI、IoT(モノのインターネット)、クラウドコンピューティングの利用が拡大し、ネットワークへの投資が増加傾向にある。94%が、AI、IoT、クラウドコンピューティングを理由に、今後2年間でネットワークに投資すると回答し、そのうち62%がAI単独の影響と答えた。
企業セキュリティにおけるネットワークの重要性
ネットワークの安全性が喫緊の課題となっている。AIの悪用など、サイバー攻撃が巧妙化しており、これに伴い、最初の防衛ラインとしてのネットワークの重要性が増している。これを裏付けるように、98%が安全なネットワークの実現がビジネスの継続と成長に重要と回答した。94%がネットワークのモダナイゼーションが企業セキュリティを強化すると答えた。
レジリエントなネットワークへの需要
AIの台頭により、レジリエント(耐障害性が高い)なネットワークの需要が高まっている。AIには高速かつ途切れのない継続的なデータアクセスが必要だが、多くの企業ネットワークはこの要件を満たせていない。事実、77%が過去2年間に大規模なネットワーク障害を経験したと回答した。平均すると年間1社当たり1件の深刻なネットワーク障害が発生しており、これは世界全体で約1600億ドル(約23兆円)の損失に相当する。主な障害の原因としては、輻輳(ふくそう)、サイバー攻撃、ソフトウェアのエラー、設定ミスが挙がった。障害の影響については、52%が収益の減少と回答した。ITリーダーたちは、ネットワーク障害がダウンタイム以上のコスト、つまり収益の減少や生産性の低下、成長の停滞につながると理解している。
AIのためのネットワーク最適化
ITリーダーは収益拡大のためにAIに注目している。回答者の55%が、カスタマージャーニー(製品やサービスに対する認知から購入までの過程)の自動化とパーソナライズにAIツールを導入することで、ビジネスの収益性を最大化できると回答した。この点で重要なのがAIに最適化したネットワークの構築だ。98%の回答者が、ネットワークアーキテクチャをAIに合わせて最適化することで、より多くの財務的価値を引き出せると回答した。
データセンターだけでは不十分
AIの利用拡大に伴い、ITインフラの再構築が必要になっている。AIワークロードが必要とするネットワーク要件は高く、ITリーダーはこの需要を満たすためにITインフラの設計を再考し、拡張と最適化に取り組まなければならない。実際、71%がデータセンターではAIの需要拡大に対応できないと回答し、88%がAIワークロードをサポートするため、オンプレミスかパブリッククラウド、もしくは両者を組み合わせたハイブリッドクラウドで容量を増やす予定と答えた。AIワークロード向けに最適化された最新のデータセンターを利用していると回答したのはわずか11%にとどまった。
自律型ネットワークへのシフト
ITリーダーにとって、企業ネットワークの目指すべき方向性ははっきりしている。98%が、AIを組み込んだ自律型ネットワークがビジネスの成長に不可欠と回答したのだ。とはいえ、自律性を備えたインテリジェントなネットワークの実現には、必要なアーキテクチャと機能の実装が不可欠で、この点では依然として理想と現実のギャップが存在する。ネットワークのセグメンテーション、可視性、制御などのインテリジェント機能を導入していると回答したのはわずか41%にとどまった。
Cisco Systemsの欧州、中東、アフリカ(EMEA)地域でCTO(最高技術責任者)兼ソリューションエンジニアリング部門バイスプレジデントを務めるチンタン・パテル氏は、この調査結果を踏まえて次のように結論付ける。「あらゆるビジネスを変えつつあるAIだが、その基盤となるのがネットワークインフラだ」
「ネットワークはDX(デジタルトランスフォーメーション)の基盤でもある。IoTやクラウドコンピューティングから、セキュリティやハイブリッドワーク(オフィスワークとテレワークの併用)に至るまで、全てを企業ネットワークが支えている。ITリーダーは、今日構築するネットワークが、将来のビジネスを形作ることを認識していなければならない。今、ネットワークのモダナイゼーションを実施する企業が、AI時代をリードするだろう」(パテル氏)
翻訳・編集協力:雨輝ITラボ(株式会社リーフレイン)
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