「ローコード」×「BPM」で業務をどう変革できる? すぐに応用できる活用例:ローコードとBPMの共通点、相違点【後編】
ビジネスプロセスの設計や改善を迅速かつ効率的に進める手法として「ローコード開発」と「BPM」がある。この2つを組み合わせることで、プロセスの可視化から自動化までを一貫して支援できる可能性がある。
業務効率化の手法として注目を集める「ローコード開発」と「BPM」(ビジネスプロセスマネジメント)。両者の目的には共通する点があるが、そのアプローチは大きく異なる。とはいえ、この2つを組み合わせれば、プロセス設計から自動化までをより少ないリソースでスピーディーに進めることが可能になる。ローコード開発ツールをBPMに取り入れることで何ができるのか。具体的なツールの選択肢や活用例を紹介する。
ローコードを取り入れたBPM
ローコードとBPMは、性質の異なる取り組みではあるが、企業はローコード開発のメリットをBPMの中で生かすことができる。それが可能になるのは、企業がビジネスプロセスの構築や管理において、ローコード開発のアプローチを採用した場合だ。ローコード開発ツールを活用すれば、最小限のコーディングで以下のような機能を実装できる。
- プロセスを分析する際に必要な情報の収集と検証
- プロセスの自動化と管理レポートの作成
- グラフィカルなUI(ユーザーインタフェース)を使ったプロセスの設計と統合
ローコード開発対応のBPMツールを使えば、大量のコードを書かずに上記のタスクを実行できるようになる。そのため、高度なプログラミングスキルを持つ技術者だけでなく、組織内の多くのユーザーにとっても、従来のBPM機能を使いやすくなる。
ローコードBPMを実行するには、ローコードとBPMの両方に対応したツールを選定する必要がある。企業が採用できる代表的なローコード開発ツールには、以下のようなものがある。
- Kissflow
- Mendix
- Microsoft Power Platform
- Zoho Creator
ローコード機能を備えたBPMツールとしては、以下が挙げられる。
- Appian
- Bizagi
- Nintex
- ProcessMaker
特定の業務プロセスに特化したツールを選ぶケースもある。例えば、BPMとローコード開発の機能を併せ持つCRM(顧客関係管理)ツールの「Creatio」や、ローコードBPMに対応したエンタープライズサービス管理(ESM)ツールの「ServiceNow」などが該当する。
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「ローコード」を使う理由
ローコードとBPMのユースケース
以下に示すように、ローコード開発のアプローチが適しているBPMのユースケースは数多く存在する。
従業員のオンボーディング
人事部門では、ローコード開発ツールを活用することで、従業員による書類の提出、書類の確認、IT機器の割り当て、振込口座の登録といったオンボーディングプロセスの主要な業務に対応するワークフローを実装できる。
顧客サービスの問い合わせ管理
顧客対応チームは、ローコードソフトウェアを使って、問い合わせの受け付け、内容の適切な担当者への転送、顧客への回答といったプロセスを自動化・統合できる。これにより、対応の効率が向上し、CX(顧客体験)の改善につながる。
経費精算の承認フロー
財務部門は、ドラッグ&ドロップ操作に対応したローコードBPMツールを使って、従業員による経費精算書のアップロード、書類の確認、支払いの承認といった一連の処理を効率化できる。
調達申請の管理
従業員は、ローコード対応のBPMツールを使って、カスタマイズしたフォームやプロセスを通じて調達申請書の作成、管理、承認を実施できるようになる。これにより、新しいIT機器の購入などがスムーズに進められる。
もっとも、全てのBPMのユースケースにローコードのアプローチが適しているわけではない。例えば、ビジネスルールが極めて複雑なプロセスでは、ローコード開発ツールにあらかじめ用意されているテンプレートやモジュールだけでは対応が難しい場合がある。レガシーシステムからのデータ収集が必要となるプロジェクトでは、既存のBPMツールでは十分に対応できない可能性もある。
こうした複雑または特殊なユースケースにおいては、プロセスのマッピング(可視化)、統合、最適化を進める上で、より柔軟で自由度の高い従来型のコーディングが求められることもある。それでも、比較的シンプルで標準的な業務プロセスであれば、さまざまな領域でローコード開発による機能実装を検討する価値があるだろう。
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