いまさら聞けない「PCaaS」とは “持たないPC”が普及する4つの理由:PC調達の常識を変える“新しい選択肢”【前編】
調達から廃棄までPCのライフサイクルを管理するサービス「PCaaS」が、IT部門の負担軽減やコスト管理の観点から注目を集めている。その仕組みと利点を解説する。
「PCaaS」(PC as a Service)とは、デバイスのライフサイクル管理サービスの一つで、企業がPCなどのクライアントデバイスを自前で調達するのではなく、サブスクリプション料金を支払ってベンダーからリースするものだ。デバイスの導入、監視と管理、回収と廃棄、OSやアプリケーションの更新といった作業もサービスとして付随しており、ユーザー企業の負担を軽減できる。本稿はPCaaSに含まれる具体的なサービスやその利点を踏まえて、PCaaSの普及を後押しする要因を紹介する。
PCaaSの普及が進む4つの理由
PCaaSの普及が進む1つ目の理由は、IT部門の負担軽減だ。前述の通り、PCaaSでは、デバイスのライフサイクル管理に含まれるさまざまなタスクをベンダーが肩代わりする。これにより、社内のIT部門の負担を軽減でき、より利益に直結する戦略的なビジネスに人的リソースを振り向けることが可能になる。
2つ目の理由は、コストの管理だ。会計上、通常デバイスの購入費用は設備投資(CAPEX)となる。対照的にPCaaSの場合、月ごとのサービス利用料金は運用経費(OPEX)となる。資産として計上され、費用対効果が把握しにくいCAPEXに対し、OPEXは金額の予測が立てやすく、予算管理しやすいという財務的なメリットがある。コストを適切に管理できれば、投資の計画も立てやすい。
3つ目の理由は拡張性だ。PCaaSなら、需要の変化に応じて利用するPCや付随するサービスを柔軟に選択できる。台数を減らすことも可能で、購入したデバイスが不要になり、投資が無駄になるような事態を回避できる。古くなって性能が不十分なデバイスの保守作業やコストも不要だ。
4つ目の理由は監視だ。一部のベンダーは、トラブルを予防し、問題に迅速に対処するために、デバイスの監視を行う。監視により、経済的損失につながりかねないデバイスの故障や、それによるダウンタイムの可能性を最小限に抑えることができる。
企業がPCaaSの採用を検討すべきケースには、以下のようなものがある。
- ITコストの予測や管理を容易にしたい
- 変化するニーズに応じて必要な種類のクライアントデバイスを必要な数だけ利用したい
- 購入からサポート終了(EOL)までのライフサイクル管理の負担を軽減したい
- 突然の故障によるダウンタイムを回避したい
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PCaaSに含まれるサービス
PCaaSには通常以下の要素が含まれる。
- デバイス
- PCaaSベンダーは顧客企業にPCなどのクライアントデバイスをリースする。ニーズに応じて追加および削減でき、それに応じて料金が変動する。
- サービス
- 多くのベンダーは、ライフサイクル管理、セキュリティ、ユーザーサポートといったサービスを提供している。サービスがサブスクリプション料金に含まれている場合と、追加の利用料金が発生する場合がある。
- メンテナンス
- PCaaSはマネージドサービスとして提供されることがある。この場合、デバイスの保守と、OSやアプリケーションの更新がサービスに含まれる。
PCaaSには、初期設定、データのバックアップとリカバリー、アセット管理などが含まれる場合がある。デバイスの故障を予測し、ダウンタイムを回避するための予測分析が含まれる場合もある。デバイスのセキュリティポリシー違反、インベントリ情報、位置情報やステータスを追跡するPCaaSもある。このようなサービスは、セキュリティを向上させ、サイバー攻撃やデータ侵害からデバイスとデータを保護するのに役立つ。
ベンダーが全てを制御する完全管理型のPCaaSから、社内のIT部門がデバイスの導入と管理作業の一部を担うハイブリッド型のPCaaSまで存在する。自社に最適なPCaaSを選択するとよい。
PCaaSの利点
PCaaSの採用には以下のような利点がある。
1つ目は初期コストの低さだ。デバイス購入に多額の先行投資をする代わりに、サブスクリプション料金を、多くの場合月単位で支払う。これにより初期コストを抑えることができるので、IT予算が限られた組織にとって特に有用だ。
2つ目が管理コストの軽減だ。ベンダーがデバイスのライフサイクル管理を肩代わりするので、企業としては管理コストを削減でき、担当者を新たに雇用する必要もない。PCaaSベンダーとの契約にメンテナンスなどのサービスが含まれている場合、契約内容によっては、既存の重複するサービス契約を解約できる可能性がある。これによりコストのさらなる削減も可能だ。
3つ目が拡張性だ。PCaaSなら臨機応変なデバイスのスケールアップまたはスケールダウンが容易だ。例えば、あるプロジェクトのために一定期間だけPCの増設が必要な場合、ベンダーから追加でリースすることができる。従業員が退職した場合、不要になったデバイスをベンダーに返却でき、余剰在庫を抱える必要がない。とはいえ契約内容によっては、一定期間のリースを強制している場合もあるので注意が必要だ。
4つ目がデバイスの最新化だ。契約によっては、技術の進歩に合わせ、時代遅れになったデバイスを入れ替えて、より新しい機種をリースできる可能性がある。
5つ目が社内人材の有効活用だ。デバイスのメンテナンスや修理を含むライフサイクル管理タスク全体を社内のITチームからPCaaSベンダーに移すことで、ITチームがより重要度の高い業務に専念することが可能になる。
後編では、PCaaSの注意点やベンダーの選び方、他の「as a Service」との違いを紹介する。
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