止まらぬ「クラウドコスト増」が足かせに AI投資が招く“深刻な現実”:AI利用で爆増するクラウドコスト
Akamai Technologiesの調査で、クラウドコストの上昇が企業の投資判断にマイナスの影響を与えていることが明らかになった。AI分野の投資収益率(ROI)の測定基準が定まっていないことも要因だという。
CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)ベンダーAkamai Technologiesが2025年7月に公開したクラウドコストに関する調査レポートでは、人工知能(AI)技術の活用が進むにつれ、クラウドコストが急上昇し、企業の投資計画に支障が出ている実態が浮き彫りになった。
この調査は英国、フランス、ドイツのクラウドまたはAIアプリケーションを担当するIT意思決定者750人を対象に、2025年6月に実施された。幾つかの要因から、クラウドコストの増大が企業にとっての深刻な課題になりつつあることは明らかだ。調査では、回答者の67%が、今後1年間でクラウドコストが増大する見込みだと回答している。
クラウドコスト増の要因は? 対処法は何か
クラウドコスト増大の主要な要因として挙げられた上位には、39%でクラウドストレージ需要の増大、37%でAIサービスの利用拡大、27%でインフレが入った。多くはないものの、20%がクラウドコストが管理不能になるほど高騰する可能性があると回答した。
こうしたコスト上昇に対処するため、68%が別の分野で予算の削減や投資の抑制を実施していると回答した。具体的な分野としては、26%が新しいAIプロジェクトへの投資コスト、同じく26%がセキュリティコスト、24%が人材採用コスト、18%がハードウェアの更新コストと回答した。
料金を下げてほしいクラウドサービスの分野としては、40%がストレージ、30%がAIと機械学習、27%がデータベースを挙げた。
Akamai Technologiesのクラウドテクノロジー部門のグローバル最高技術責任者(CTO)であるジェームズ・クレッチマー氏は、こうした結果を受けて、「クラウドコストが指数関数的に増加している組織もある。クラウドコストの急上昇が企業の成長とイノベーションへの投資を妨げている」と解説する。
「特にAI分野では、クラウドコストに対し投資収益率(ROI)を十分に引き出せていない企業が多い。さらに、大手クラウドベンダーはクラウド内のデータを外部に転送する際に発生する『エグレス料金』を設定しており、ベンダーロックインから逃れられない企業はクラウドコストをコントロールできなくなっている」。クレッチマー氏はそう語る。
AI戦略とROI測定基準の整備が必要
レポートでは、65%が今後1年間でAI分野への投資を増やす予定と回答している。問題は、AIプロジェクトのROIを追跡していないと答えた企業が82%にも上ったことだ。AIプロジェクトが黒字になっていると回答したのはわずか11%で、AIプロジェクトを支える十分な予算があると答えたのは25%だった。
クレッチマー氏は、企業はAI投資に対してより繊細なアプローチを採用する必要があると語る。「AI投資のROIを測定するには、従来のIT投資と同じ指標や方法論では不十分だ。ITリーダーは期待する成果を厳密に定義する必要がある。“生産性が向上したから成功”ではない」
「クラウド戦略を見直し、コスト削減に役立つ代替手段を模索する必要があることは明らかだ。例えば、エッジ(データの発生源であるデバイスの近く)でAI推論を実行することで、コンピューティング需要を管理し、コストを抑制できる。大手クラウドサービスだけでなく、AI推論のようなパフォーマンス重視のアプリケーション向けに設計されたクラウドサービスの採用も検討すべきだ」(クレッチマー氏)
翻訳・編集協力:雨輝ITラボ(リーフレイン)
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