いまさら聞けない「BaaS」入門 定義が揺らぎ始めている理由は?:BaaSの選び方【前編】
現代の企業の事業継続に欠かせないBaaS。そのサービス内容は多様化し、関連用語との境界線も曖昧になっている。自社に最適なサービスを選ぶため、まず知っておくべきBaaSの概要と、主な3つの種類とは何か。
BaaS(サービスとしてのバックアップ)は、企業の災害復旧(DR)対策に欠かせない存在だ。BaaSを利用すれば、企業は自社でバックアップ用のソフトウェアやシステムを運用する必要がなく、ベンダーが管理するソフトウェアとインフラを通じて、遠隔でデータのバックアップと復旧が可能になる。これによって、データのバックアップと復旧のプロセスを簡素化できる。
BaaS市場は近年大きく変化しており、自社のバックアップシステムのパフォーマンスやセキュリティ、費用対効果を改善する好機だ。本連載はBaaSの定義を振り返るとともに、2025年時点における主要な9つのBaaSの概要を紹介する。
そもそもBaaSとは何か
BaaSは、外部のサービスベンダーが提供するソフトウェアとインフラを利用して、データのバックアップと復旧を可能にするデータ保護の一形態だ。企業がデータの保護と復旧のためにBaaSを選択すれば、自社のシステムにバックアップ用のソフトウェアを導入したり、バックアップデータを保管するためのストレージインフラを確保したりする必要がなくなる。これらの業務は全て、BaaSベンダーが担う。
ただし、BaaSの厳密な定義は曖昧になりつつある。データのバックアップと復旧を可能にするソフトウェアのベンダーが、自社製品をBaaSとして市場に投入しているからだ。中には、ベンダーがソフトウェアの運用保守を担うものの、クラウドストレージは提供しないサービスもある。インシデント発生後のデータ復旧を積極的に支援するベンダーもあれば、データ復旧作業を完全にユーザー企業に委ねるベンダーも存在する。
このようにBaaSという言葉の使われ方が多様化した結果、BaaSと、それ以外のデータ保護クラウドサービスやオンプレミスのバックアップ/データ復旧ソフトウェアの境界線が曖昧になっている。そうした曖昧な語の例として、「リモートバックアップ」と「マネージドバックアップ&復旧」がある。リモートバックアップは、社外のリモートインフラを利用するバックアップ手法を指すが、必ずしもベンダーが管理するインフラを使うとは限らない。マネージドバックアップ&復旧は、ベンダーがユーザー企業に代わってデータのバックアップと復旧の両方を実施することを指す。
新たな技術トレンドは、BaaS分野に新しい可能性と課題をもたらしている。その中心にあるのがAI(人工知能)技術だ。BaaSにおけるAI技術は、一部のタスクの効率化に貢献する。文章や画像を自動生成するAI技術「生成AI」は、管理者が従来のソフトウェアや自動化スクリプト(簡易プログラム)を使わずに、自然言語でバックアップポリシーを定義できるようにする可能性を秘めている。
一方で、AI技術を活用するためのシステムやAIモデルの学習データをバックアップする必要性が生じていることで、バックアップの要件は複雑化している。全てのBaaSが、AIモデル用の形式のデータや、そのための大規模なデータを保護できるとは限らないからだ。
主なBaaSの種類
BaaSには3つの基本的な種類がある。
種類1.パブリッククラウド型
パブリッククラウドで稼働するバックアップツールを使って、パブリッククラウドにバックアップデータを保管する。パブリッククラウドストレージを活用できるため、拡張性に優れる点が利点となる。パブリッククラウドのデータセンターは冗長化されており、信頼性が確保された設計であることもメリットだ。
種類2.プライベートクラウド型
企業のプライベートインフラで稼働するバックアップツールを使って、プライベートインフラにバックアップデータを保存する。プライベートインフラの構築には通常、BaaSベンダーが管理するプライベートクラウドを利用する。主な利点は制御のしやすさであり、企業はパブリッククラウドよりも自由に設定を変更しやすい。
種類3.ハイブリッドクラウド型
パブリッククラウドとプライベートクラウドなど、複数の場所にバックアップデータを保管できる自由度が特徴だ。必要に応じて、両方に同時に保存することもできる。バックアップソフトウェアは、バックアップデータとは別の場所でホストする構成が一般的だ。ハイブリッドクラウド型のBaaSは、データの保管場所やストレージの種類などを自由に組み合わせることで、読み書き速度、費用、カスタマイズ性、信頼性といった要素の間で、企業が最適なバランスを見つけるのに役立つ。
次回は主要な9つのBaaSと、BaaSを選ぶ際のポイントを紹介する。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。