検索
特集/連載

AIエンジニアの「年収格差」が浮き彫り その“残酷な現実”AIへの信頼が低下した?(1/2 ページ)

最新調査でAIエンジニアの国別収入格差が判明した。米国が高水準だが、同時にAIツールへの不満の高まりが明らかになった。その結果と、予想される開発への影響とは。

Share
Tweet
LINE
Hatena

関連キーワード

人工知能 | 開発ツール


 開発者コミュニティープラットフォーム「Stack Overflow」を運営するStack Exchangeは、毎年、開発者を対象とした調査レポートを公開している。最新版に当たる「2025 Developer Survey」が2025年7月29日(現地時間)に公開された。レポートは177カ国からの4万9000件以上の回答を基にまとめられている。開発におけるAIツールの利用状況の他、機械学習(ML)などのAI技術を専門とするエンジニアの収入には明確な差が生じている実態などが明らかになった。

AI/MLエンジニアの収入格差は?

 AIや機械学習(ML)を専門とするエンジニアの収入について国ごとの年収中央値を見ると、18万9500ドル(約2800万円)で米国がトップとなった。英国は中央値が14万9756ドルで、米国を約4万ドル下回る。フランスは7万3089ドル、インドはわずか1万7436ドルにとどまった。世界全体の年収中央値は8万9427ドルで、米国のAI/MLエンジニアの高収入ぶりが際立つ結果となった。

AIツールの利用状況と信頼度

 開発において、AIツールをほぼ毎日使うと回答したのは47.1%に上った。利用方法については過半数に当たる54.1%が、「知りたいことの検索」を挙げた。次いで35.8%が「コンテンツや合成データの生成」、33.1%が「新しい開発コンセプトや技術の学習」と続く。

 その他は、30.8%が「ドキュメント(ソースコードの解説)の生成」、24.8%が「ドキュメントの作成や保守」、20.8%が「コードベースの理解」、20.7%が「ソースコードのデバッグや修正」だった。開発者が幅広い用途にAIツールを役立てている傾向がうかがえる。

 AIツールの出力精度については、「やや不信感がある」または「非常に不信感がある」と答えた割合が44.7%で、「非常に信頼している」「ある程度信頼している」の合計32.7%を上回る。この数字は2024年より低下しており、AIツールに対する失望が広がっている可能性がある。

 プロフェッショナルな開発者に限定すると、「非常に信頼している」がわずか2.7%とさらに低下する。経験がある開発者ほどAIツールを信頼していない現状が浮き彫りになった。

 AIツールに対して不満を感じる理由としては、AIの出力について「ほぼ正しいが、一部精度に欠けること」が66%と最多だった。2番目は「AIが生成したソースコードのデバッグに時間がかかること」で、45.2%だった。

photo

AI技術における人間の役割とは

 「AIがさらに高度化した未来においても、どのような状況ではAIではなく人間に助けを求めるか」という質問では、「AIの回答を完全には信頼できない時」が75.3%とトップになった。これは、どんなにAI技術が進歩しても、最終的に出力の品質と正確性を評価するのは人間であることを示唆している。

 調査の結果を受けて、Stack ExchangeのCEOを務めるプラシャント・チャンドラセカル氏は次のように語る。「AIツールの性能が向上し、企業での導入が進んでいることを考えると、AIツールに対する信頼度の低下が見られたのは重要なポイントだ。便利ではあるが、誤情報のリスクが伴い、関連性が低かったり単純すぎたりする回答を生成する可能性があるという、AI特有の欠点が広く知られるようになったのだろう」

 「AIの利用が当たり前になり、『AIスロップ』(AIが生成した低品質なコンテンツ)がインターネット上にあふれている中で、今後は厳選した質の高い知識ベースに基づいた、信頼できる、責任あるAI開発アプローチが必要になるだろう。“人間の知性”というレイヤーを開発に加えることで、AI技術とAI製品に、より大きな価値を持たせることができると、私たち開発コミュニティーは信じている」(チャンドラセカル氏)

翻訳・編集協力:雨輝ITラボ(リーフレイン)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る