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AndroidスマホやiPhoneの「バッテリーの持ち」を悪くするNG集スマートフォン「バッテリー駆動時間」問題の傾向と対策【前編】(1/2 ページ)

スマートフォンのバッテリーの持ちが悪いのは、なぜなのか。その原因を把握することは、バッテリー駆動時間を最大限に延ばす助けになる。「Android」スマートフォンと「iPhone」について、具体的な原因を探る。

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 スマートフォンのバッテリーをいかに持たせるかは、モバイルワーカーにとって悩みの種だ。バッテリー駆動時間は、適切な使い方によって延ばすことができる。

 モバイルワーカーは、さまざまなタスクでスマートフォンに大きく依存している。バッテリーを使い切ってしまうと、ワークフローが中断したり、リアルタイムのデータ受信ができなくなったりする恐れがある。

 スマートフォンのバッテリー駆動時間は、生産性に影響を与える。モバイルワーカーが主にスマートフォンではなく、他のクライアントデバイスを使って仕事をしていても、それは変わらない。企業が業務アプリケーションへのアクセスに、多要素認証(MFA)を要求する動きが広がっていることが背景にある。スマートフォンのバッテリーが切れていると、モバイルワーカーはMFAプロセスを完了させることができず、重要なアプリケーションから一時的に締め出される可能性がある。

 こうした問題を防ぐために、IT部門はスマートフォンの選定・調達プロセスの一環として、バッテリー駆動時間が十分かどうかを確認しなければならない。OSやハードウェアの機能といった電力消費の要因を考慮し、スマートフォンのバッテリー駆動時間ができるだけ長くなるようにサポートする必要がある。

一様ではないバッテリー駆動時間

 スマートフォンの選択は、バッテリー駆動時間に影響を与える主な要因だ。OSとしてGoogleの「Android」を備えるスマートフォンと、Appleの「iOS」を備えるスマートフォン「iPhone」では、バッテリーを管理する方法が異なるからだ。IT部門は、自社で運用する「モバイルデバイス管理」(MDM)ツールがAndroidスマートフォンとiPhoneのそれぞれについて、バッテリー関連の設定を管理できるようにしているかどうかを確認する必要がある。

Androidスマートフォンのバッテリー駆動時間

 バッテリー駆動時間に影響を与える要因の一つに、OSがある。OSレベルのバッテリー管理機能の巧拙が、電力効率に影響するからだ。特にAndroidスマートフォンの搭載OSが「Android 8.0」よりも前のバージョンだった頃は、バッテリーの減りの速さがよく指摘されていた。その後Androidは、バッテリー管理に関してかなりの進歩を遂げた。

 Androidスマートフォンのベンダーはさまざまであり、機種によってバッテリー駆動時間に差がある。ベンダーが自社のスマートフォン用にOSやハードウェアをどのように最適化するかが、処理速度などのパフォーマンスだけではなく、バッテリー駆動時間に大きな影響を及ぼす。

iPhoneのバッテリー駆動時間

 ベンダーや機種による違いが大きいAndroidスマートフォンと比べると、iPhoneは電力効率の点で優れるとの声がある。その理由としてよく挙がるのが、Appleが自社でiPhoneを設計し、製造を管理していることだ。OSとハードウェアの両面で、電力効率を高めるための工夫をしやすいと考えられている。

 例えばAppleは、グラフィックスAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)である「Metal」をiPhoneに最適化することで、電力消費を抑えつつ、グラフィックスのパフォーマンスを高めているという。iPhoneがバックグラウンドアプリケーションを積極的に一時停止することも、バッテリー駆動時間の確保に寄与していると考えられる。

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スマートフォンの「バッテリーの持ち」が悪くなる要因

 機種やOS以外にも、スマートフォンのバッテリー駆動時間に影響することは幾つかある。

 スマートフォンのバッテリーやその他の部品が古い場合、最新のものに比べて電力消費が多くなる傾向がある。少し余分にコストを掛けてでも、購入時点での最新スマートフォンを購入することで、長い目で見れば買い替えを減らせる可能性がある。

 従業員がスマートフォンで使用するソフトウェアや機能は、バッテリー駆動時間に大きく影響する。動画編集をはじめ、CPU(中央処理装置)などのハードウェアリソースを酷使するアプリケーションを頻用すると、電力消費が大きくなりがちだ。BluetoothやNFCといった近距離無線通信やGPS(全地球測位システム)、無線LANなどの機能を実現する無線コンポーネントは、有効にすると当然ながら電力を消費する。

 ディスプレイをより明るくすることは、電力消費の増加につながる。増加の程度は、スマートフォンの機種によって異なる。小ぶりのスマートフォンと比べて、大きめのスマートフォンは液晶ディスプレイのバックライトが大きかったり、有機ELディスプレイの自己発光ピクセル(画素)が多かったりすることから、電力を消費しやすい。

 液晶ディスプレイは一般的に、使用時にはバックライトを常時点灯させておくことが必要だ。一方で有機ELディスプレイの中には、画面の暗い領域にあるピクセルなど、一部ピクセルの発光をオフにすることで、電力消費を節約できるようにしているものがある。ただし画面における白の比率が大きくなると、有機ELディスプレイは強めに発光させるピクセルを増やすことになり、場合によっては液晶ディスプレイよりも電力消費が増えやすくなる。常に一方が他方よりも省電力になるわけではない。

 ネットワーク接続も電力消費に影響する。接続可能な基地局を探すプロセスは、かなりの電力を消費することがある。5G(第5世代移動通信システム)接続は、理論上は比較的高い通信速度や電力効率を誇る。ただし電波の弱い地域では4G(第4世代移動通信システム)接続よりも電力消費が増えることがある。特にミリ波(周波数が30GHzから300GHzの電磁波)の利用時は基地局のカバー範囲が狭いため、スマートフォンは頻繁に基地局を探す必要があり、電力消費が増大しやすくなる。

 バッテリーは一般的に、充放電のたびにフル充電時の容量が少しずつ減少し、駆動時間が短くなる。こうした劣化を早める要因には、充電習慣や温度条件などがある。

 満充電(バッテリー容量の100%までの充電)や過放電(残量が0%近くになるまでの放電)を繰り返すことは、バッテリーの劣化を早める要因となる。充電をバッテリー容量の80%程度までにとどめ、残量が20%を下回る前に充電するといった配慮で、バッテリーの劣化が抑えやすくなるといわれる。

 従業員が、暑い日に直射日光の当たる場所にスマートフォンを放置すると、バッテリーの劣化が早まる可能性がある。充電によるスマートフォンの発熱の他、保護ケースによる熱の閉じ込めにも注意が必要だ。保護ケースを付けたまま、一晩中充電したままにするといったことは、なるべく避けた方がよい。


 後編はここまでの内容を基に、スマートフォンのバッテリー駆動時間を可能な限り長くするために、IT部門ができることを解説する。

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