Wi-Fiから移行するケースも 産業界で進む「プライベート5G」活用例:今後はプライベート5Gが主流に?
企業や自治体が独自に構築する5Gネットワーク。製造業の無線トラブル解消から自治体の大幅なコスト削減まで、その活用例は想像以上に広がっている。
無線LAN(Wi-Fi)や有線LANでは解決できない課題を抱える組織にとって、「5G」(第5世代移動通信システム)をユーザー組織が自営網として利用できる「プライベート5G」がネットワーク構築の新たな選択肢として浮上してきた。さまざまな産業の企業がプライベート5Gの導入を進めており、導入現場では「Wi-Fi接続による生産ライン停止が解消された」「監視カメラの設置コストを約6分の1に削減できた」といった成果が報告されている。
Wi-Fiの限界を超える活用例も
プライベート5Gの成長をけん引するのは、製造業やプロセス産業における「インダストリー4.0」(第4次産業革命)に関連する分野だ。工場やプラントなど限られたエリアで使われる、オンプレミスのプライベート5Gが当面の中心となる。予測期間の後半には、公共安全や電力、ガスといった公益事業、鉄道通信など広域での利用に拡大する見込みだ。特にSub-GHz(1GHz未満の周波数)帯を用いた高信頼かつ高重要度の通信が、「LTE」(Long Term Evolution)や「GSM-R」(鉄道向けGSM:Global System for Mobile Communications)といった古い狭帯域技術から5Gへの移行を加速させるとみられている。
TeslaやLG Electronics、Hyundaiは米国と韓国の工場で、自動運搬装置(AGV)や自律走行搬送ロボット(AMR)の通信を、Wi-Fiからプライベート5Gに切り替えた。その結果、無線の不安定さが原因で起きていた課題を大幅に緩和している。製造現場では長らくWi-Fi接続の不安定さが生産性向上の妨げとなっていたが、プライベート5Gの導入によりこの問題は大幅に改善された。
フランスのイストル市では、監視カメラの接続を有線の光ファイバーからプライベート5Gに置き換えた。これにより、1台当たりの設置コストを3万4000ドルから6000ドル未満へと大幅に削減できた。
中国華能集団(China Huaneng Group)は、中国内モンゴルのイーミン露天掘り炭鉱において、700MHz、2.6GHz、4.9GHzの3つの周波数帯を組み合わせた「5G-Advanced」ネットワークを導入した。5G-Advancedは5Gの進化系だ。5G-Advancedネットワークにより、100台の無人電動採鉱トラックを同時に協調制御することに成功している。
主流技術への道筋
プライベート5Gは高い性能と信頼性、拡張性を備えており、産業分野で求められる要件に適している。これまで導入の障壁となっていたコストや運用面の不安も改善が進み、実用化の環境が整いつつある。今後は工場内のネットワークから公共インフラや鉄道などの広域で重要性の高い通信へと用途が広がり、2028年には産業界で主流の技術として定着すると見込まれている。
特に注目すべきは、従来の有線接続やWi-Fiでは対応が難しかった以下の分野で活用が進んでいる点だ。
- 製造業の生産ライン制御
- 自治体によるインフラ監視
- 鉱山での大規模な無人車両の協調制御
プライベート5Gは多様な場面で成果を上げており、その応用範囲は想定以上に広がっているのだ。
翻訳・編集協力:雨輝ITラボ(リーフレイン)
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