どうするフィールドエンジニアの人材不足 Unisysが示す突破口は?:若手にどう対処する
データセンターやネットワークの保守、点検を担うフィールドエンジニア不足が深刻化している。人材の離職防止や定着に向けた施策にはどのようなものがあるのか。ある企業の取り組みを紹介する。
IT人材の不足が企業の課題となっている。経験豊富な高齢のIT人材が退職を迎えれば、退職者に代わるレベルのスキルを持つ若手を採用する必要がある。しかし、採用はそう簡単ではない。
データセンターやネットワークなど、ITインフラの保守、点検を実施する「フィールドサービス」においても、人材不足は深刻だ。フィールドサービス業務に携わる企業の約半数が、同業務を担うエンジニア(以下、フィールドエンジニア)の人材不足に直面しているという調査結果もある。
フィールドエンジニアの離職と人材不足、他社はどう防いでいる?
データセンターとネットワークの保守サービスを提供するPark Place Technologiesのデビッド・クレーマー氏(サービスデリバリー担当プレジデント)は、「現場従業員に対するイメージは悪化する傾向にあり、人材確保は困難になりつつある」と指摘する。フィールドエンジニアをはじめとした現場作業員は、昔ながらの手作業中心の肉体労働であり、男性中心で勤務時間が不規則な職業だと捉える声もある。
ネットワーク機器ベンダーExtreme Networksのダン・デ・バッカー氏(シニアバイスプレジデント兼プロダクトマネージャー)は、「若手は人工知能(AI)やクラウドサービスといった最新のテクノロジー分野の仕事に就きたがる」と述べている。
求められるスキルには変化が
ITコンサルティング企業Unisysのパトリツィア・ソベラ氏(デジタルワークプレイスソリューション担当シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー)は、「AI需要に対応してデータセンターを刷新する顧客は増加傾向にある。そのため、フィールドエンジニアに求めるスキルの需要には変化が見られる」と語る。
「Dell TechnologiesのAI PC(AI技術の処理のための機能を標準搭載するPC)には、故障の予防や診断を支援するツールが搭載されている。ストレージや冷却機能など、複雑なインフラ関連の業務は増加しつつある」(同氏)
ソベラ氏によると、2024年からの1年間で、PCのサポート業務は20%減少した。その一方、インフラの保守、点検業務は20〜25%増加したという。2026年には、AI需要の高まりに合わせてインフラ関連の業務が30〜35%増加すると同氏は予測している。
従業員のエンゲージメントと定着率の低さが、フィールドエンジニアの離職に拍車を掛けているという声もある。
従業員の働き方改革 どうすれば?
この状況を克服するにはどうすればよいだろうか。UnisysとPark Place Technologiesの施策を紹介する。
Unisysの場合
Unisysは、従業員の声に耳を傾け、不満の解消に努めることで離職の防止に尽力している。
「数年前まで、私たちは退職を間近に控えた世代の退職問題にばかり気を取られていた」とソベラ氏は振り返る。「フィールドエンジニアが定時に帰宅して家族と一緒に食事ができるようになるかを考えることがおろそかになっていた」(同氏)
具体的な施策の1つとしてUnisysは、業務システムの最適化に2000万ドルを投資した。同社のフィールドサービスシステムと物流システムを統合して、作業指示の割り当て、フィードエンジニアの派遣、スケジュール管理、運転ルートの最適化を進める。フィールドエンジニアの業務効率の向上を狙うものだ。
経験の浅いフィールドエンジニアを支援するため、モバイルデバイスを使ったトレーニングプログラムも提供している。AIを活用したコンテンツで作業をシミュレーションできるようになっており、外出先で研修を受けることが可能だ。
従来型のナレッジマネジメント手法ではなく、AIとデジタルツイン技術(現実世界の動作や現象を仮想的に再現する技術)を使った、先輩エンジニアから若手への知識の継承も進められている。その目的は2つだ。1つ目は、退職を間近に控えた世代の従業員が培ってきた知識の維持。2つ目は、新しい人材の獲得だ。入職したばかりのフィードエンジニアのオンボーディングを迅速させるだけでなく、「ストレスや、学習と経験に必要な時間と労力」を削減することを目的としている、とソベラ氏は説明する。
「デジタルツインとAIを使って、退職を間近に控えた世代の行動を仮想的に複製し、作業時にチケットを発行する段階からトレーニングまでのプロセスとリアルタイムデータを蓄積する。このシステムを使ってシミュレーションとモニタリングを実施することで、経験の浅いフィードエンジニアに意思決定の手順を示すことができる」(ソベラ氏)
Park Place Technologiesの場合
Park Place Technologiesもさまざまな取り組みを進めている。一般的なデータセンターでは、営業時間内にフィールドエンジニアが立ち入ることを禁じている。そのため、フィールドエンジニアは夜間や週末に作業せざるを得ない場合がある。同社はシフト制勤務を導入し、フィールドエンジニアが平日でも有給を取得できるようにした。
フィールドエンジニア以外の職務を一定期間担当できる仕組みも導入した。これにより、「データセンターと関係のない専門的な業務を経験することができ、新しい専門分野とスキルを習得できる」(クレーマー氏)
「目指しているのは、フィールドエンジニアのキャリアの選択肢を増やすことだ」。クレーマー氏はこう述べている。「独自の技術スキルを持つ人材を見つけることがいかに難しいかを理解している。だからこそ、才能ある人材を失いたくない」(同氏)
Park Place Technologiesは新卒者の採用に加えて、社内での人材登用にも力を入れている。これにより、技術スキルとソフトスキルの両方を社内で強化する。技術面では、メインフレームなど、歴史ある技術分野に特に重点を置いている。
「施策の成果は一定ではない。しかし、ITエンジニアを目指す若手の従業員が、フィールドエンジニアとしての経験を先に積むことを希望している。若手の人材への投資に力を入れることで、当社で働き続けてキャリアを積もうとする従業員は増加している」(クレーマー氏)
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