「SEO」から「GEO」へ “AIに引用される”コンテンツの作り方6選:SEOは終わったのか【後編】
生成AIを用いた情報検索が普及する中、従来のSEOだけではなく、AIツールに「情報源」として選ばれるための新しい戦略「GEO」(生成エンジン最適化)が欠かせなくなっている。具体的な6つのアプローチを解説する。
AI(人工知能)技術が人々の生活を変えている例が情報検索だ。AIチャットbot「ChatGPT」、AI搭載型検索ツール「Perplexity」などの生成AIを活用したツールは、エンドユーザーの情報収集の在り方を根本から変えつつある。AIツールや検索エンジンのAI機能がWebの情報を要約して直接回答を示すため、エンドユーザーが個別のWebサイトを訪れる機会は減少傾向にある。
こうしたトラフィックの喪失は、従来のSEO(検索エンジン最適化)を前提としてきたWebマーケティングにとって脅威になっている。この変化に順応し、AIツールに「良質な情報源」として選ばれ、エンドユーザーに自社の情報を届け続けるためには、どのようなアプローチが必要なのか。「AI検索時代」を勝ち抜くための6つの具体的な対策を掘り下げる。
“AIに選ばれる”コンテンツを作る6つの方法
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生成AIを活用した検索は課題をもたらす一方で、新たな機会も生み出している。以下に示す6つのアプローチは、変化する状況の中で企業が認知度とエンゲージメントを高めるのに役立つ。
アプローチ1.トラフィックの減少を特定する
マーケティング担当者はまず、クリック率が低下している分野を特定すべきだ。こうした分野は、エンドユーザーが生成AIツールの検索結果で回答を見つけ、企業のWebサイトまでアクセスしないことがよくあるという。
次に、その分野のコンテンツを更新し、企業名、独自の価値の提案、ブランドメッセージを強調することで、明確なブランドイメージを打ち出す。このアプローチによって、エンドユーザーが直接Webサイトを訪問しなくても、企業の認知度を高めることが可能になる。
アプローチ2.コンテンツの信頼性を高める
生成AIツールは回答を生成する際、信頼性が高く権威のある情報源を重視する。そのため、企業は誰が、どのような専門性に基づいて発信している情報なのかを明確にし、信頼性のあるコンテンツを作成しなければならない。このアプローチは、生成AIを活用検索結果における認知度を高め、ユーザーとの信頼関係を築く上で効果的だ。
調査会社Forrester Researchでプリンシパルアナリストを務めるニキル・ライ氏は、「企業は、作成する全コンテンツに対して、『Google検索』や『Bing』といった検索エンジンが、著者は誰で、なぜそのトピックの専門家なのかを明確に理解できるようにする必要がある」と説明する。同氏は著者の信頼性、コンテンツの認知度を高めるために有効な対策として、以下を挙げる。
- 高品質な顔写真の使用
- 著者情報の構造化データの導入
- 企業向けSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)「LinkedIn」のプロフィールページへのリンク掲載
- 著者とCEOとの関係性を示すパンくずリストの設置
アプローチ3.エンドユーザーが使う言葉を理解する
生成AIツールに対して、エンドユーザーは会話形式で質問できる。これを考えると、生成AIツールの回答に引用されるようにするためには、マーケティング担当者もエンドユーザーと同じ言葉遣いでコンテンツを作成することが重要だ。例えば、PCメーカーのターゲット層が「ゲームと学校の課題に最適なノートPCは?」と検索した場合、「学校の課題とゲームの両方に適する優れたノートPC」といった会話的な表現を使ったWebページの方が、「高性能GPUと生産性向上ソフトウェアを搭載したノートPC」のような専門用語を多用したWebページよりも表示されやすい。調査会社Constellation Researchでバイスプレジデント兼アナリストを務めるリズ・ミラー氏は、「重要なのは、エンドユーザーの声に耳を傾け、その視点で考えることだ」と語る。
企業のターゲット層が使う言葉を明らかにするために、マーケティング担当者は以下の手段を講じることができる。
- SNSやユーザーコミュニティーの分析
- 掲示板サイト「Reddit」、Q&Aフォーラム「Quora」、動画共有サイト「YouTube」のコメント欄などから、エンドユーザーの生の言葉に関する洞察を得る。
- ユーザーレビューの調査
- 通販サイト「Amazon」のレビューやビジネスレビューサイト「Yelp」などから、エンドユーザーが自身のニーズや好み、体験をどのように表現しているかを把握する。
- アンケートやインタビューの実施
- エンドユーザーと直接対話し、彼らの語彙(ごい)や言い回しを学ぶ。
- 検索クエリの監視
- Google検索でのパフォーマンス分析ツール「Google Search Console」などのツールを使い、顧客が製品やサービスを検索する際に使用するキーワードを特定する。Google検索で、検索クエリに関連するキーワードを提示する「他の人はこちらも検索」機能も、エンドユーザーの言葉のパターンを特定するのに役立つ。
- カスタマーサポートデータの活用
- 問い合わせや苦情、フィードバックから、エンドユーザーに共通する言葉遣いや懸念事項を明らかにする。
アプローチ4.短縮された購買プロセスにコンテンツを適応させる
従来のマーケティングでは、消費者は「認知」「検討」「購入」という明確な段階(マーケティングファネル)をたどることを想定していた。一方で生成AIが検索を主導する時代では、消費者はこれらの段階を短時間で素早く済ませようとする。この行動モデルは「円筒形ファネル」とも呼ばれる。
一方で「セッションは短くなったが、その中で消費者はより多くの質問をするようになった」とライ氏は指摘する。
ライ氏はマーケティング担当者に対し、発見から意思決定まで、エンドユーザーのあらゆる意図を、1つのコンテンツで応えられるように設計することを提案する。幅広い層に対する基本的な紹介、詳細解説、「購入」「問い合わせ」といった次の行動を促す案内を組み合わせた包括的なコンテンツは、人間と生成AIツールの両方に響きやすい。
アプローチ5.エンドユーザーの視点で生成AIツールを使ってみる
デジタルマーケティング企業Jellyfish Digital Groupで戦略担当バイスプレジデントを務めるジョン・ドーソン氏は、マーケティング担当者が実際のターゲット層になりきって生成AIツールに質問することを勧める。このプロセスを通じて、生成AIツールがどのようにコンテンツを検索して提示するのか、それを受けてエンドユーザーがどのような質問や言葉遣いをするのかについて、洞察を得ることができる。
この実験をする際は、エンドユーザーの立場に立つことが重要だ。企業のコンテンツ戦略とのエンドユーザーの目線のギャップを発見し、メッセージをエンドユーザーのニーズに合わせることにつながる。生成AIツールに、自社の業界や製品に関連する質問をして、生成AIツールが自社ブランドをどのように表現するのか、あるいは認識されないのかを明らかにできる。
「好奇心を持ち、ChatGPTやPerplexityを実際に使ってみてほしい。これらのツールを体験し、消費者の視点から考えてみることが重要だ」とドーソン氏は語る。
アプローチ6.新たな指標を追跡する
「クリック率やトラフィック、検索結果での掲載順位といった従来のSEO指標は依然として重要だが、それだけでは消費者の行動を捉え切れない」とミラー氏は指摘する。マーケティング担当者はこれらの指標に加えて、生成AIツールが情報を検索、提示する方法に沿った新しい指標で補完することが重要だ。具体例を以下に挙げる。
- シェアオブAIボイス
- 「シェアオブAIボイス」は、マーケティング用語の「シェアオブボイス」(Share of Voice:SOV)をAI検索に応用したキーワードだ。SOVは、自社が出稿した情報が他社や市場の中でどの程度露出しているかを示す指標を意味する。シェアオブAIボイスは、生成AIツールの回答の中で、自社の情報がどのくらいの頻度で引用または参照されているかを示す指標。
- SERP占有率
- SERP(検索結果ページ)全体で、生成AIツールの回答、広告、自然検索などを含め、自社ブランドがどれだけのスペースを占めているかを示す指標。
- プロンプト可視性
- どのようなエンドユーザーの質問や会話形式のクエリが、自社ブランドを生成AIツールの回答に表示させるきっかけになったのかを示す指標。
SEOは終わったのではなく、変化した。生成AIツールは人々の検索方法を変えたが、従来の検索エンジンも重要なトラフィック源だ。AIツールが検索体験を再構築する中で、マーケティング担当者は従来型とAI主導型の両方の検索で、企業の認知度を維持するために戦略を適応させなければならない。
競争力を維持するには、信頼性の高い情報源であることを示し、エンドユーザーの言葉で語り、生成AIツール上で自社がどのように表示されるのかを定期的に追跡することが重要だ。従来のSEO戦略を、AI向けの「GEO」(生成エンジン最適化)で補完することが、検索とAI技術が融合する新しい時代で成功する鍵になる。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。