開発の“手戻り地獄”はなぜ起きる? 9割が悩む「要件定義の属人化」:ベテランの“勘”頼みは限界
開発プロジェクトの工数増や納期遅延を招く「手戻り」の原因は、上流工程である要件定義の曖昧さにあるという。現場を苦しめる根本課題と、その解決策として脚光を浴びるAIツールの活用実態を、調査から読み解く。
システム開発の現場において、プロジェクトの進行を妨げる「手戻り」や「品質のばらつき」が深刻な課題になっている。
システム開発ツールベンダーのROUTE06は2025年10月29〜30日、上場しているIT企業の部長職325人を対象にアンケート調査を実施した。その結果、9割以上が、要件定義の工程で業務が特定の個人に依存する「属人化」を感じていることが明らかになった。全体の85.2%が「半数以上のプロジェクトで手戻りが発生している」と回答しており、要件定義の曖昧さが、後工程のコスト増や納期遅延に直結している現状がうかがえる。
こうした状況を打破するため、開発プロセスにAI(人工知能)ツールを取り入れようとする動きが加速している。現場は具体的にどのようなツールを求めているのか。
AIツールに求められる「文書作成」だけじゃない役割
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システム開発におけるAI活用
要件定義の課題として、最も多くの回答者(54.5%)挙げたのが「未経験者が実施するのが難しい」ことで、「成果物の品質にばらつきがある」との声も44.9%に上った。要件定義フローの中で難しいと感じる工程を尋ねた設問では、「現状把握」が最多の50.8%で、要件定義の入り口でつまずいている実態が浮き彫りになっている。
調査結果によると、回答者の約9割が、開発プロセスの少なくとも1つの工程でAIツールを活用している。具体的な工程としては「要件定義」が45.2%で最も多く、「実装」が44.3%、「詳細設計」が43.1%と続き、上流から下流まで幅広い場面で活用が進んでいる。
注目すべきは、要件定義において汎用(はんよう)的なAIチャットbotだけではなく、業務に特化したツールの導入が進んでいる点だ。「要件定義に特化したAIツール」を実運用している企業は25.8%に上る。現在はAIチャットbotのみを利用している回答者も、87.5%が専用ツールの導入を検討しており、関心の高さがうかがえる。
ROUTE06の取締役である松本 均氏は、「現場がAIツールに求めているのは文書作成の効率化にとどまらない」と指摘する。抜け漏れの検出や思考プロセスのガイドといった、より本質的な支援への期待が高まっているという。要件定義を個人のスキル任せにするのではなく、AIツールが担当者の思考を補完することで、属人化しない再現可能なプロセスへと転換することが、今後のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の鍵となりそうだ。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。