経営層をどう説得した? 菓子メーカーが見積り業務の属人化解消で調達DXを導入:データに基づいた議論が可能に
ちぼりホールディングスは、情報の属人化や非効率な相見積り業務といった課題を解決するために、調達管理ツール「リーナー見積」を導入した。導入までの経営層とのやりとりや導入効果を紹介する。
菓子メーカーのちぼりホールディングスは、菓子原材料価格の高騰や価格競争の激化など外部的な課題に加え、「見積り情報の属人化」「見積書の非効率な比較作業」といった課題を抱えていた。そこで同社は、Leaner Technologiesの調達管理ツール「リーナー見積」を導入し、調達業務の効率化、透明性の向上、データに基づいた戦略的な交渉力強化を実現した。
ちぼりホールディングスによると、システムの導入に当たっては、コスト面で懸念を示す経営層に丁寧な説明を心掛けた。その内容は。
経営層に伝えた内容は
菓子の企画、開発、製造、パッケージデザイン、販売を担うちぼりホールディングスでは、デジタルソリューション部が社内システムの導入や業務改善を、開発部は新商品の企画、原材料や包材の購買を担当している。
ちぼりホールディングスは、購買の専門部署を設けず、開発担当者ごとに購買権限を分散させていたが、その一方で「見積り情報の属人化」や「相見積もり業務の非効率性」といった問題が顕在化していた。同社管理本部デジタルソリューション課の黒田一行氏は、「原材料価格の高騰が続く中、価格改定の背景が不透明になり、請求書に書かれている内容の妥当性確認に手間がかかっていた」と語る。
開発部の加藤 務氏は「サプライヤーごとにフォーマットが異なる見積書のデータを『Microsoft Excel』に転記して比較する作業が負担となっていた」と述べる。さらに、見積りデータは各従業員が管理するため、価格の妥当性判断は各人の経験に依存していたという。
こうした課題を受け、同社が導入したのがLeaner Technologiesのクラウド型調達管理システム「リーナー見積」だ。サプライヤーとちぼりホールディングスが共通プラットフォームでやり取りできることや、統一フォーマットで見積りの一覧比較ができること、取得した情報を社内の基幹システムに連携できることが導入の決め手となったという。
リーナー見積の導入は高額な費用が課題だったが、加藤氏はシステム導入の目的や効果を丁寧に説明することで経営層の理解を得られたという。単に「見積りの内容や費用を比較するシステムを導入したい」と伝えるだけでは難色を示された可能性があると同氏は説明する。
経営層への最初の説明では、担当者によるスキルの差をなくし、価格を正確に比較できるようにすることを提案した。全従業員が同一のフォーマットでやり取りし、価格動向を把握できるだけではなく、社内にデータを蓄積すれば、正しい単価での比較や管理、価格交渉ができるようになる。
そこで黒田氏は、「属人化排除」「データ蓄積による長期的な効果」といった観点から、リーナー見積の導入で何が実現できるのか、導入後の活用ビジョンを示した。これにより、経営層からシステム導入の同意を得ることができた。
リーナー見積の導入に際しては、社内勉強会を実施し、特にベテラン従業員の理解を深めることに注力した。その結果、開発部での同ツールの利用率は100%に近い状態に達している。サプライヤーもユーザーインターフェース(UI)のシンプルさによってスムーズに順応しているという。
導入効果も顕著だ。見積りの取得から比較にかかる時間は、従来の約1〜2時間から約30分に短縮した。加えて、催促メールや不採用通知送付の自動化により、年間で業務時間を数十時間分削減できた。検索機能による情報参照性の向上も、業務効率化に貢献している。
属人化していた情報が社内で共有され、価格判断の透明性も高まった。これにより、「市況的に仕方がない」とされてきた価格の値上げに対しても、データに基づいた議論が可能となった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.