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年間300万時間削減へ、MUFGが“AIネイティブ企業”に本格転換 その舞台裏全行員に「ChatGPT Enterprise」提供

三菱UFJフィナンシャル・グループは、OpenAIやSakana AIと提携し、AI活用を進めている。同社CDOがシンガポールのイベントで明かした具体的な取り組みを紹介する。

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 三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)は、AI(人工知能)技術を単なるツールとして利用する段階を超えて、行員と共に働くAIエージェントの活用を推進している。

 2025年11月12日にはOpenAIとの戦略的なパートナーシップ契約を締結したMUFGはどのような取り組みを進めているのか。MUFGの執行役員兼CDO(最高デジタル責任者)、江見盛人氏が、シンガポールで開催されたイベント「MUFG Fintech Festival」で語った内容を紹介する。

年間300万時間の削減を実現、具体的な取り組みは

 江見氏によると、MUFGは全行員にAIツールを提供しているものの、実際にツールを定期的に利用しているのは半数にとどまっている。同行はこうした状況の改善を図りつつ、AIエージェント導入の準備を進めている。

 「AIはツールではなく、人間と共に働くデジタル従業員として実務を担う存在へと進化している。重要なのは自社独自のデータの使い方だ」(江見氏)

 データの活用を推進するため、MUFGは次の3つの事項に注力している。

  1. AI研修の全社展開
  2. AIエージェントを安全かつ効果的に運用するためのシステム基盤の整備
  3. AIモデルが理解しやすい形にするデータ戦略の構築

 特に、AIエージェントによるデータへのアクセスを視野に入れたビジネスモデルの再構築を進めているという。

 MUFGは2025年7月、MUFGグループ全社でAI利用を促進するプロジェクト「Hello AI @ MUFG」を始動した。初回イベントには6000人以上が参加し、生成AIに最も効果的な指示を与えるプロンプトの作成を競うコンテストを開催した。

 MUFGは、AIベンダーとの連携にも注力している。

 2024年10月、MUFGはOpenAIのサービスを活用した業務改革を目的とする覚書を締結。2025年11月12日には、両社が戦略的なコラボレーションにかかる契約を締結したと発表した。これらの契約を通じて、同行の全行員は「ChatGPT」の法人向け有料プラン「Enterprise」を利用可能になる。OpenAIはMUFGに、高度なAI活用事例の開発や専門のサポートサービスも提供する計画だ。

 2025年5月には、銀行業務の変革を目的としたAIの実装戦略で連携する目的で、Sakana AIとの間で3年間のパートナーシップ契約を締結した。Sakana AIは、国内発のユニコーン(評価額10億ドル以上の未上場企業)として知られる。

 MUFGは、AI技術を業務に組み込む取り組みを進めている。約60件の高度なユースケースを進行させており、年間約300万時間の業務削減を見込んでいる。

 その一例が、法人顧客向けの文書作成プロセスの自動化だ。人間のアナリストでは見逃す可能性のある買収候補を見つけ出す、AI技術を活用したM&A(合併と買収)マッチング機能もある。

 MUFG傘下の三菱UFJ信託銀行は、法務、財務文書から情報を抽出するAIドキュメントリーダーを活用し、年間数千時間の業務を削減している。AI技術による信用分析を用いて、2026年度末(2026年3月31日)までにオンラインで取り扱う中小企業向け融資件数を3倍に増やすことも目指している。

 一連の取り組みについて江見氏は、「MUFGのAI戦略は人間の労働力を置き換えることではない」と強調する。「私たちは、人間かAIかのどちらかを選ぶのではなく、人間とAIが互いに学び合うことが最も強力な組み合わせだと信じている」と述べる。

 これらの変革を主導するMUFGのデジタル戦略統括部は、AI活用を含むDX(デジタルトランスフォーメーション)を全社で推進するため、2024年4月に設立された。米国やアジア各地にデジタルチームを構築する他、MUFGのベンチャーキャピタル部門を通じて投資している配車アプリケーション「Grab」を手掛けるGrab Holdingsとも戦略的提携契約を締結している。

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