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カプコンがゲームのアイデア創出に「ADK」「Gemini」を採用 その活用方法はゲーム会社の生成AI活用

ゲーム会社のカプコンは、Googleの「Agent Development Kit」(ADK)や「Gemini」などのAIツールをゲームの企画立案の際に利用する。同社が生成AI技術を利用する狙いとは。

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 「モンスターハンター」シリーズや「バイオハザード」シリーズを手掛けるゲーム会社のカプコンは、新作ゲームのアイデア出しや企画立案の際に生成AIを活用している。2025年10月30日と31日に開催されたGoogleのイベント「AI Agent Summit ’25 Fall」で、同社のゲーム開発システムのテクニカルディレクターを務める阿部一樹氏がその詳細を語った。

「新しいゲームアイデア」を形にする際の課題とは

 阿部氏は、生成AIを利用する際の前提として、次のように説明する。「カプコンは、ゲームのプレイヤーが直接触る部分や、ゲームクリエイターや開発者の独創性が求められる領域に、生成AIを使おうとは考えていない。AI技術はあくまでクリエイターの想像性を最大限に引き出すための補助的なツールだ」

 生成AIで解決できる可能性があるゲーム制作の課題として、阿部氏は「アイデアのビジュアル化や共有にかかる時間とコスト」を挙げる。ゲームクリエイターのアイデアをチームで客観的に評価するには、文章やコンセプトアート、プリビズ映像(イメージを共有するための仮映像)を作成して共有する必要がある。しかしこうしたアイデアのビジュアル化には人手や時間、工数が掛かる。

「そのため、たとえ頭の中で素晴らしいアイデアを思い付いても、そのアイデアが形になる前に消えてしまうことがある」(阿部氏)。AI技術でアイデアを瞬時にビジュアル化することで、チーム内で評価が可能なアイデアの数を増やし、最終的な企画の質を向上させることを目的として、カプコンはAIエージェントの開発に着手した。

 同社がAIエージェント開発に主に利用しているのは、GoogleのAIエージェント開発フレームワーク「Agent Development Kit」(ADK)と入力したアイデアを基に推論や計画を実行するAIモデル「Gemini」、画像生成AIモデルの「Imagen」、動画生成AIモデルの「Veo」だ。

 ゲームクリエイターがAIエージェントに簡単な設定やストーリーアイデアを箇条書きのメモを取り込んで、「この設定を基に映像を作りたい」と日本語で指示すると、AIエージェントに組み込まれたGeminiが「シナリオをテキストで生成した後、絵コンテを生成し、その内容を基に映像を制作する」といった映像作成に適したプロセスを提示する。ユーザー側は出力されたシナリオや絵コンテ、映像などの各プロセスに対し、自分の意図に合わせて修正を加えられる(画像1)。

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AIエージェントで作成したプリビズ映像(出典:カプコン資料)《クリックで拡大》

 キャラクターのアイデアを深堀りしたい場合は、キャラクターのイメージを瞬時に可視化するAIエージェントを作成して利用できる。AIエージェントはキャラクターのビジュアルを瞬時に可視化したり、背景設定をテキストでまとめたりすることを助ける。背景設定に合わせてキャラクターの映像や画像を生成し、制作チームで共有しやすくすることも可能だ(画像2)

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キャラクターの仮の設定資料を作成する様子(出典:カプコン資料)《クリックで拡大》

ADKとGeminiを組み合わせて目的に応じたAIエージェントを作成

 阿部氏はこのAIエージェントのコンセプトとして、「自律進化型AIエージェント」を掲げる。ユーザーの入力内容によってリアルタイムに出力結果を変化させる「動的な共創エンジン」と、AIシステム自身が品質の高い出力結果を自己選択する「品質管理エンジン」の2つの仕組みを組み合わせることで、これを実現している。

 共創エンジンは開発者の要望に応じてAIワークフローをリアルタイムに再構成し、出力結果に微調整を加えながらユーザーのアイデアを具体化できる仕組みだ。品質管理エンジンは、AI技術によって出力結果の自動評価を繰り返し、品質基準に満たない結果を自動で再生成する仕組みだ。「物理的にはあり得ても、映像の流れや文脈の整合性が取れていない」といった生成AIの特有の問題を抑える。

 阿部氏はADKについて「さまざまなAIエージェントを『役割』と『その役割を遂行するためのツール』という2つの要素で組み合わせるためのシンプルな仕組み」と話す。ADKによって映像の制作といった複雑なタスクでも、シナリオや絵コンテ、映像を生成する複数のAIツールを組み合わせて、容易に実行することが可能になった。

Google製のAIモデルに加えて、動画に字幕やBGMを自動付与する自社開発のツールなどを連携させられる点も評価している。ADKとGeminiで作り上げたワークフローはノード(図)として可視化できる。そのため、AIエージェントの思考プロセスの透明性を高められる点や、ユーザーが意図に合わせて修正を加えられる点もメリットだという(画像3)。

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AIの思考プロセスをノードで確認できる(出典:カプコン資料)《クリックで拡大》

 阿部氏は今後のAI技術の活用方針について、「AI技術はクリエイターの仕事を奪うものではなく、クリエイターの創造性を無限に拡張させる強力なパートナーになり得る」と話す。

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