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AIに負けない子どもを育てるには? AI時代を憂慮する保護者の本音と現実あの仕事ならAIが代われない?

AI技術の利用が広がり続けている。将来、子どもたちが大人になる頃には、どの仕事が存在し続け、どの仕事が消えているのか――。AI時代を生き抜く子どもに、保護者ができるアドバイスは。

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人工知能


 人工知能(AI)が社会のさまざまな場所で活用されている。人間の従業員が担ってきた業務をAIツールに置き換え、人員削減を進める企業の動きもある。このような環境を憂慮する保護者は、自分の子どもにどのような内容でキャリア構築のアドバイスをすればいいのか。

AI時代に親が子にできるアドバイスとは

 自動車部品販売業者のHalfordsは2025年11月、英国の保護者1000人と11〜18歳の子ども1000人を対象に実施した調査の結果を発表した。この調査によると、AIの影響を懸念している保護者のうち、「子どもに対するキャリア構築のアドバイスの内容を変えた」と答えた割合は89%に上った。さらに保護者の約50%は、2年前と比べて「工具や機械、テクノロジーを扱うようなハンズオン型のスキル」をより重要視するようになったと回答した。

 HalfordsのCEO、ヘンリー・バーチ氏はこの調査結果について、「保護者は、AIが子どものキャリア構築に影響を及ぼす恐れがあることを懸念している。そこで、デジタルスキルとともに、ハンズオン型のスキルを組み合わせることの重要性を認識している」と述べる。

 調査によると、「ソフトウェア開発やデータサイエンスといったテクノロジー関連の仕事に子どもを就かせたい」と答えた保護者は20%未満だった。一方、子どもの約75%は、「将来の仕事では工具や機械、技術を扱えることが重要」と回答した。子どもの約40%は、「AIのせいで仕事を得にくくなる」と考えていることも明らかになった。

 Halfordsによると、英国では高度なIT・技術スキルを持つ人材に加え、建設や機械修理といった分野の熟練労働者が不足している。こうした状況を受けて、「建設、機械修理といったハンズオン型のスキルを生かせる分野が、子どものキャリア構築における有望な選択肢になる」と回答した保護者の割合は74%に上った。

 調査では、AIが子どものキャリア構築に及ぼす影響に備えて、子どもにどのようなスキルを身に付けさせたいか保護者に尋ねた。その結果、保護者の40%は創造的思考や問題解決能力といった「ソフトスキル」を、36%は「技術的な知識」を身に付けてほしいと考えていることが分かった。

 子どものキャリア構築にAIが困難をもたらすと考える保護者がいる一方、テクノロジー関係、特にAIの分野で働きたいと考える子どもがいることも調査から明らかになった。

 子どもの回答者に「今就きたいと思っている仕事」を尋ねたところ、「コーディング、AI、ゲーム関係」が最多で33%、続いて「医師、弁護士、ITエンジニア」(27%)が並んだ。

 一方、「職人」や「技能工」といったハンズオン型の仕事を希望すると答えた子どもは約20%にとどまった。「自動車、ロボット、電気系統の修理などに関わる仕事」を望んでいると答えた子どもの割合は約60%だった。

 バーチ氏によると、英国政府は、AIの使用を前提とした就労スキルを労働者が構築できるようにするための取り組みを進めている。一方Halfordsは同国政府に対し、その取り組みを見直し、ハンズオン型の仕事に結び付くスキル構築の施策も強化すべきだと提言している。

 バーチ氏は、ハンズオン型の仕事について次のように述べる。「ハンズオン型の仕事をこれまで以上にアピールし、労働者が就労しやすくするだけでなく、価値ある仕事であるという理解を深めるためには、産業界が政府と連携して取り組む必要がある」

 「労働者のスキルギャップは拡大し続けている。子どもたちの将来を守るためには、若者がさまざまな選択肢の中からキャリアを構築できるように、より多くの教育機会とインセンティブを提供することが必要だ」(バーチ氏)

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